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看護研究計画書の書き方:基本項目、作成手順、倫理的配慮について解説

看護研究は、日々の看護実践の中で生まれる疑問や課題を解決し、エビデンスに基づく看護を提供するのに役立ちます。看護研究に取り組み、質の高い論文を執筆するためには、「看護研究計画書」の策定が欠かせません。

本記事では、研究の基盤となる看護研究計画書の重要性や基本構成、倫理的配慮のポイントについて解説します。

看護研究計画書の重要性と目的

研究テーマや目的、研究の対象や方法、倫理的配慮などを網羅的にまとめた書類を研究計画書といいます。研究を進める際の指針であり、都度振り返りながら原点に立ち戻ることで、研究をスムーズに進めることができます。また、研究の指導者や倫理委員会をはじめとする第三者に研究内容を端的に伝える際にも役立ちます。

看護研究計画書とは、看護研究において作成される研究計画書です。臨床の疑問や課題を科学的・客観的な手法で解明するための設計図であり、研究の論理的妥当性や倫理的安全性、および実現可能性を担保する役割を果たします。

研究計画書の目的

看護研究計画書の最大の目的は、研究プロセス全体を可視化し、リスクやバイアスを事前に排除することにあります。具体的には以下の3点が挙げられます。

倫理審査委員会(IRB)からの承認取得

対象者の人権と安全を最優先し、ヘルシンキ宣言などに基づく詳細な計画が不可欠です。

実現可能性の評価

限られた期間や人的リソース、予算内で目的が達成可能かを検証し、研究が頓挫してしまうリスクを防ぎます。

客観性と透明性の担保

計画を固定することで、結果を見てから都合よく仮説を変更するような行為を防ぎ、科学的信頼性を担保します。

また、計画段階で論理展開を明確にしておくことは、将来的に国際誌への論文投稿を見据えて英語論文を執筆する際にも役立ちます。看護研究計画書は、指導教員や外部の審査機関との認識の齟齬を防ぐ「共通言語」としても機能します。

看護研究計画書の基本構成

厚生労働省の「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針ガイダンス」には、研究計画書の記載事項として、以下の25項目が挙げられています。主な項目を抜粋・要約します。※1

研究計画書の記載事項(試料・情報の収集・提供を実施する場合を除く)

1.研究の名称
2.研究の実施体制
3.研究の目的及び意義
4.研究の方法及び期間
5.研究対象者の選定方針
6.研究の科学的合理性の根拠
7.インフォームド・コンセントを受ける手続等
8.個人情報等の取扱い
9.研究対象者に生じる負担やリスクを最小化する対策
10.試料・情報の保管及び廃棄の方法
11.研究機関の長への報告内容及び方法
12.利益相反に関する状況
13.研究に関する情報公開の方法
14.研究により得られた結果等の取扱い
15.相談体制及び相談窓口

16~18. インフォームド・コンセントに関する項目
19. 研究対象者等の経済的負担又は謝礼
20~22. 侵襲を伴う研究や通常の診療を超える医療行為を伴う研究の場合の項目
23~25. その他

ただし、この25項目はあくまで原則であり、倫理審査委員会の意見を受けて研究機関の長が許可した事項については、この限りではありません。※1

看護研究計画書の主な項目

所属する医療機関や協会によっては、看護研究計画書の見本やひな形、テンプレートが用意されているケースもあります。※2、3、4

参考になるものがないか研究の指導者や先輩研究者に確認し、基本的にはテンプレートやひな形に沿って必要な項目を端的にまとめましょう。質の高い看護論文を書くためには、研究計画書の作成段階から論理的に構成することが大切です。主な記載項目について解説します。

研究テーマの選定

看護研究の最初のステップは、研究テーマの選定です。臨床的な疑問や違和感を、検証可能なリサーチ・クエスチョンへ昇華させます。PICO・PECOなどのフレームワークを活用し、重要なキーワードを組み込みながら、関連する要素や課題を網羅した研究テーマを端的な言葉で表現します。※2、3、4

関連記事:看護研究のテーマ設定――PICO・PECOフレームワークやFINERの基準など

研究の動機・背景・意義

研究テーマが決まったら、なぜそのテーマを今取り上げる必要があるのかを、社会的文脈と学術的文脈の双方から記述します。医中誌WebやPubMedなどのデータベースで先行研究をリサーチし、これまでの研究で何が明らかとなっており、何が課題として残されているかを提示します。さらに、本研究が看護実践や患者のQOL向上にどう寄与するかという社会的意義も明記します。※2、3、4

広い社会的課題から、臨床現場の具体的なジレンマ、そして先行研究のレビューへと視野を絞り込む「ファネル(漏斗)構造」で記述すると説得力が増します。既存の知見だけでは目の前の臨床課題が解決できない理由を、論理的に説明します。

また、必要に応じて用語の定義もしておきましょう。例えば、「ストレス」や「QOL」といった抽象的な概念は読者間で解釈の齟齬を生みやすいため、あらかじめ定義しておくことが大切です。具体的には、先行研究の文献やガイドラインなどを引用しつつ、「本研究における『ストレス』とは、〇〇尺度で測定されるスコアを指す」といった形で客観的に定義します。※3

研究の目的設定

「本研究を通して最終的に何を明らかにするのか」を端的に宣言します。倫理審査委員会に研究の目的を明確に伝えるため、「~について明らかにする」「~の効果を検証する」といった形式で、単一の主目的に絞り込むことが推奨されます。※2、3、4

目的をできるだけ明確に定めることで、収集すべきデータや分析手法がクリアになり、研究の精度が高まります。

研究方法の選定(研究デザイン、対象者、期間、データの収集・分析など)

研究の目的に応じて、最も妥当なアプローチを決定します。量的研究(ランダム化比較試験、前向きコホート研究、横断的質問紙調査など)、質的研究(半構造化インタビュー、参加観察法、グラウンデッド・セオリー・アプローチなど)、その両方を組み合わせた混合研究法などが選択されます。※2、3、4

また、研究対象や期間を設定し、データの分析方法や収集方法についても記載します。調査対象者については、適格基準および除外基準を詳細に設定し、その募集方法や標本抽出法(無作為抽出、層化抽出、有意抽出など)、サンプルサイズの算出根拠なども明記します。※2、3、4

関連記事:看護における質的研究の重要性と方法論

関連記事:研究方法の種類と適切な選び方

倫理的配慮の重要性

研究計画書の作成段階から倫理的配慮を意識し、遵守しなければいけません。研究計画書における倫理的配慮のセクションは、倫理審査委員会を通過し、研究を実施するための最も重要な関門といえます。

看護研究は人を対象とするため、ヘルシンキ宣言に基づく国際的な倫理基準や、厚生労働省の「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針ガイダンス」の厳守が求められます。研究計画書では、以下の項目を網羅的に記載します。※1、4

インフォームド・コンセント

目的や予測される利益・不利益を説明し、自由意思による書面同意を得るプロセスです。

不利益の排除

同意の撤回権と、参加拒否による不利益が一切生じないことを保証します。

個人情報の保護

データの匿名化、施錠保管、研究終了後の適切な廃棄方法について記載します。

利益相反(COI)の開示

資金提供の有無や経済的利害関係など、利益相反について自己申告します。

参考文献とリソース

言及したデータや先行研究は、すべて正確に出典を明記します。参考文献の記載方法は、所属機関または投稿予定のジャーナルの指定フォーマットに従います 。研究計画書の作成段階や先行研究のリサーチ段階から文献管理ソフトを活用することで、効率的な執筆が可能となります。※2、3、4

研究計画書の作成段階で結果・考察の見通しを立てることも重要

研究計画書の作成段階から、「結果をどのように整理し、どのような論理的枠組みで考察を展開するか」あるいは「期待される結果」や「本研究での限界や課題」などの見通しを立てておくことは、研究の一貫性を保つ上で重要です。確実な結果は書けないため、「~という結果が得られると推察される」「~という仮説が検証される見込みである」「~という課題が解決できると予想される」といった表現を用います。

研究を進めた結果、予想とは異なる結果が出た場合でも、都合の悪いデータを無視する(チェリーピッキング)ことは避けましょう。代替的な説明を多角的に検討すること、研究結果が臨床現場にもたらす「臨床的意義」を明示すること、今回の研究の限界を誠実に提示しながら今後の研究への提言を行うことが重要です。

看護研究計画書の作成にあたっては、所属する医療機関や看護協会にテンプレートやひな形を最大限に活用しましょう。テンプレートの項目を埋めるプロセス自体が、倫理的な抜け漏れを防ぐ自己点検になります。

参考文献

※1 厚生労働省. 人を対象とする医学系研究に関する倫理指針ガイダンス.
※2 大阪母子医療センター看護研究委員会. 看護研究のすすめ方.
※3 長﨑県看護協会. 看護研究計画書.
※4 神奈川県看護協会. 看護研究計画書(看護研究用).