科学技術・学術政策研究所(NISTEP)が公開した「科学技術に関する国民意識調査-偽情報・誤情報の認知と判断-」の概要
科学技術・学術政策研究所(NISTEP)は、2009年度から毎年、科学技術イノベーション政策の立案および推進のために「科学技術に関する国民意識調査」を実施しています。2025年度の調査では、SNSやメディアを通じた偽情報や誤情報をテーマに、科学技術に関する意識や関心度、偽情報や誤情報に関する用語の理解や接触頻度、情報の真偽の確認などについての質問が設定されました。実施概要は以下の通りです。
調査方法:インターネットを使った質問票調査
調査対象:国内に居住する15歳から69歳までの男女各3,300名(計6,600名)
回答者の58%が科学技術に関するニュースや話題への関心を示す「高関心層」
科学技術に関するニュースや話題への関心についての質問では、回答者全体の15%が「関心がある」、43%が「どちらかというと関心がある」と回答しており、その合計は58%と過半数に達しています。
性別で比較すると、男性のほうが女性よりも科学技術に対する関心度が高いという結果になった一方で、5歳ごとに区切った年齢層分布では、性別による分布ほどの差異はありませんでした。
さらに今回の調査では、「関心がある」または「どちらかというと関心がある」と回答した人を「高関心層」、「どちらかというと関心がない」または「関心がない」と回答した人を「低関心層」と区分しました。これにより、科学技術に関する意識や関心度と、偽情報および誤情報の認知・判断との関係について分析しています。
高関心層のほうが偽情報や誤情報に関する基礎的な用語への理解が深い
偽情報および誤情報に関する項目では、まず、基礎的な科学技術用語の理解についての質問が設定されました。具体的には、以下の8単語について理解度を尋ねました。
・フェイクニュース
・生成AI
・偽情報
・誤情報
・ファクトチェック
・プロパガンダ
・ディープフェイク
・ニセ科学・疑似科学
その結果、いずれの用語においても、高関心層のほうが「内容や意味を具体的に知っている」と回答した割合が高く、「知らない」と回答した割合が低くなっていました。科学技術に関心が高い人ほど、これらの用語について理解しているという傾向が見て取れます。
なお、「内容や意味を具体的に知っている」と回答した人が最も多かった用語は「フェイクニュース」で、回答者全体の33%が当てはまりました。内訳としては、高関心層が43%、低関心層が18%と差はありますが、低関心層においても「漠然と内容や意味を知っている」と答えた37%を合わせると過半数を超えます。したがって、「フェイクニュース」は広い層で認知されている用語といえます。
「内容や意味を具体的に知っている」と回答した人が2番目に多かった用語は「生成AI」で、回答者全体の27%(高関心層は36%、低関心層は13%)でした。こちらも「漠然と内容や意味を知っている」を合わせると、高関心層では78%、低関心層では49%となり、社会的な関心の高さがうかがえます。
一方、「ファクトチェック」「プロパガンダ」「ディープフェイク」などの用語は、「内容や意味を具体的に知っている」または「漠然と内容や意味を知っている」の合計がいずれも過半数を割っていました。「ニセ科学・疑似科学」という用語については、高関心層における認知度も低く、「知らない」と回答した人が全体の47%と半数近くに達しています。
高関心層のほうが偽情報や誤情報との接触頻度は高く、その真偽を確かめようとした割合も高い
偽情報や誤情報との接触頻度について、過去1か月間でどのメディアにおいて偽情報や誤情報だと思われる情報に接触したかという質問も設定されました。その結果、「SNS(動画投稿を含む)」と回答した人が最も多く、高関心層では62%、低関心層では53%となっていました。次いで多かったのが、「テレビ」と「ニュース系アプリ・サイト」でした。
なお、偽情報や誤情報だと思われる情報に接触したかどうか「わからない」と回答したのは、高関心層で8%、低関心層で18%となっており、科学技術への関心が低い層では偽情報や誤情報に接触しても気づかない、あるいは疑いを持たない人もいる可能性が浮き彫りとなっています。実際に、偽情報や誤情報との接触頻度についての質問において、「一度も接触がない」と回答したのは高関心層では4%にとどまり、低関心層では18%に達しています。
また、偽情報や誤情報だと思う情報に接触した際に、その情報の真偽を確かめようとしたかを尋ねる質問も設定されました。高関心層は高い確率で疑わしい情報の真偽を確認しようとした一方で、低関心層では「疑わしい情報のうち0~20%の真偽を調べた」という回答が過半数を占めていました。
ただし、どのような方法で情報の真偽を確かめようとしたかについては、高関心層・低関心層ともに「何もしなかった」と回答した人が最も多く、高関心層で66%、低関心層で84%が該当します。他の方法としては「他の情報源を探した」や「友人・知人・家族に直接話した」が多く、いずれも高関心層のほうが回答の割合が高くなっていました。一般の人がどのようにして情報の真偽を確かめるか、その方法や手段が確立されていない現状が浮き彫りとなっています。
科学技術への関心や信頼性が低い層に対する働きかけが重要
今回の調査からは、科学技術に関する関心度が高い人ほど、以下の傾向があることが明らかとなりました。
・偽情報や誤情報に関する基礎的な用語の理解が深い
・偽情報や誤情報との接触頻度が高い
・偽情報や誤情報だと思う情報の真偽を確かめようとした割合が高い
また、今回の調査では他にも、「科学技術の発展にはプラス面とマイナス面のどちらが多いか」を質問し、プラス面が多いと回答した層とマイナス面が多いと回答した層に二分して、同様の分析を行っています。結果としては、科学者への信頼が高い、あるいは科学技術の発展に対してプラス面の見方が強い層においても、用語の理解や接触頻度、真偽を確かめようとした割合は、高関心層と同様の傾向が見られました。
本調査では、これからの科学技術政策の方向性として、科学技術に対する関心や信頼性が低い層に対して適切かつ積極的に働きかけることが課題であると締めくくられています。偽情報や誤情報に関連する基礎的用語の理解促進はもちろん、SNSをはじめとするさまざまなメディアの特性を把握し、科学技術に対する関心や信頼性を高めるための政策や方針が期待されます。









