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看護論文の書き方:基本構成、採択率を高めるためのポイント、研究計画書から投稿手順まで解説

看護論文は、臨床の中で生じた疑問や気づきを科学的なプロセスで検証し、ケアの質向上につながるエビデンスとして共有するための文章です。看護論文の基本構成や、採択率を高めるためのポイント、研究計画書の書き方や投稿手順について解説します。

看護論文の基本構成

看護論文は基本的に、「はじめに」「方法」「結果」「考察」の4セクションで構成されています。

はじめに(Introduction)

なぜこの研究が行われる必要があったのかを論理的に説得するためのセクションです。

・研究の背景
社会的な動向、疫学的情報、現在の臨床現場が直面している課題などをまとめます。

・先行研究
先行研究のレビューをただ列挙するのではなく、「既存の研究では何が未解決で、自分の研究はそこに何を付け加えるのか」を示します。関連する文献を適切に引用しながら、先行研究の要点と限界を整理します。

・本研究の意義と目的
本研究の社会的・臨床的価値を示し、「本研究では最終的に何を明らかにするのか」を明確かつ簡潔に宣言します。ここで設定された目的は、論文の終着点である「結果」および「考察」のセクションと完全に呼応していることが重要です。

方法(Methods)

論文の科学的妥当性と客観性を担保するためのセクションです。研究の再現性を確保できるよう、詳細かつ正確に記述する必要があります。

研究テーマによって、選択すべき研究デザインは大きく「量的研究」と「質的研究」に分類されます。いずれも、データの収集方法や解析手法、分析手順などを明示します。

研究デザイン 概要と記述すべき内容のポイント
量的研究(観察・介入) どのような規模の対象者から、どのような尺度を用いて数値データを収集したかを示します。
・目的変数と説明変数の定義(操作化)
・測定尺度が概念に対応しているか
・使用した統計ソフトウェアや有意水準、具体的な解析手法(t検定、分散分析、相関分析など)など
参考:統計手法を報告するための指針(SAMPL ガイドライン) など
質的研究 インタビューガイドの概要や、依拠した理論的枠組みに基づくデータコーディングのプロセスを説明します。
・データ収集法(インタビュー、参加観察、自由記述など)
・分析手順 など
参考:SRQRガイドライン 、インタビュー/フォーカスグループ向けのCOREQチェックリスト など

また、近年は研究データをオープン化する流れが活発化しており、学術ジャーナルのなかにも「データ利用可能性ステートメント(DAS)」の記載が義務付けられるケースが増えています。データの出所を明示することは、科学の透明性と研究の信頼性を飛躍的に高める要素となります。

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結果(Results)

「はじめに」で提示した本研究の目的に沿って、研究手法から導き出された客観的なファクト(事実)を提示するセクションです。精度の高い記述に加え、図表を用いながら、主要所見を明確に提示します。

「結果」のセクションでは、著者の主観的な意見や解釈には触れず、研究の目的から逸脱しないよう、得られたデータと事実のみを客観的に記述します。統計データを示す際は、学会やジャーナルが定める厳密な表記ルールに従う必要があります。

すべての図表は、出現順に通し番号と図表タイトルを付与します。また、図表を挿入する場合は、本文中でその詳細な数値を繰り返して説明するよりも、図表から読み取れる主要な傾向や特筆すべき異常値について述べると効果的です。

考察(Discussion)

「結果」で明らかになった客観的な事実をもとに、本研究の意義、研究の結果わかったこと、本研究の限界、今後の課題などを考察します。「結果」のセクションでは客観性が重要ですが、「考察」のセクションでは、主観的に分析し自分なりに解釈を述べることが求められます。

「はじめに」で提示した本研究の意義や目的に立ち返り、先行研究のレビューを見返しながら、本研究を通して得た成果を的確に表現しましょう。先行研究の結果(他の研究者の意見)と、今回の研究結果および著者自身の意見を区別して記述し、一致する点・一致しない点を明示しながら説明することで、根拠のある考察として書くことができます。

採択率を高めるためのポイント

近年重要性が増しているのが、「ハイライト」と「レイサマリー」です。現代の論文執筆においては、これらのセクションを戦略的に組み込むことが重要です。

・ハイライト(Highlights)
研究の核心的な成果や新規性を、85文字以内の短い箇条書き3~5項目程度でまとめます。検索エンジンやデータベース上での発見性を高めるための要素です。

関連記事:投稿アカデミー(9)論文投稿における「Highlights(ハイライト)」の書き方とポイント

・レイサマリー(Lay summary)
専門用語を避け、能動態を用いて15単語程度の短い文で構成される要約です。研究成果を専門家以外の一般社会、メディア、あるいは研究資金の提供者に対して平易な言葉で説明するためのもので、研究の社会的影響力を高めるために不可欠な要素となりつつあります。

関連記事:投稿アカデミー(8)Lay summaryの書き方
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また、以下の要素は査読でも注目されるため、ヌケモレなく構成に含めることが大切です。

・タイトル、抄録、キーワード
・倫理(倫理審査・同意・個人情報管理)の明記
・研究デザインに応じた報告ガイドライン
・利益相反(COI)、資金源、著者貢献度(オーサーシップの透明性)

論文タイトルの付け方

タイトルは、読者や査読者がその論文を読むべきか否かを判断する最初の接点です。研究の対象と目的を具体的に表現し、タイトルを一読しただけで「誰を対象に」「どのような目的で」「何を明らかにした研究なのか」がイメージできる必要があります。

タイトルを設定する際は、クリニカルクエスチョン(臨床疑問)を整理・構造化するためのフレームワークを活用します。治療などを行う介入研究にはPICO、リスク要因や予後などを観察する観察研究にはPECOを用い、重要な概念をモレなく盛り込むようにしましょう。

・PICO:Patient(患者)、Intervention(介入)、 Comparison(比較)、Outcome(結果)
・PECO:Patient(患者)、Exposure(要因・曝露)、Comparison(比較)、Outcome(結果)

具体的には、「高齢者の転倒について」のような曖昧な表現は避け、「認知症高齢者における夜間転倒を生み出す環境要因に関する横断的調査」などのタイトルが推奨されます。研究デザインや焦点をタイトルにも明確に打ち出すことが不可欠です。

さらに、情報検索の観点から、主要な検索キーワードをタイトルの前半に配置する工夫も効果的です。学術データベースの検索結果一覧に表示された際、読者の目に入りやすい30文字程度の長さで主要なキーワードや要点を伝えることができれば、クリック率や引用数の向上につながります。

倫理的配慮の重要性

人を対象とする看護研究において、倫理的配慮は最も厳格に遵守されるべき事項です。研究は、世界医師会ヘルシンキ宣言の「人間の参加者を含む医学研究のための倫理的原則」に基づいて実施される必要があり、論文内にはその宣言を遵守した旨を明記することが国際標準となっています。

厚生労働省が公開している「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針ガイダンス」も、必要に応じて参照しましょう。研究の社会的・学術的意義、科学的合理性、利益と不利益の比較考量、独立した倫理審査委員会の審査、十分な説明と自由意思による同意、弱い立場への配慮、個人情報管理、研究の質と透明性の確保などが掲げられています。

研究に着手する前に、所属施設や大学の倫理審査委員会から承認を得ることも求められます。論文には、承認を得た正式な機関名と承認番号を明確に記載します。

また、対象者への配慮については、承認の事実だけでなく実際のプロセスにおいてどのような倫理的配慮を行ったかを具体的に記述する必要があります。

倫理的配慮の項目 実施および記述すべき具体的な配慮内容
インフォームド・コンセント 研究の目的、方法、予測されるリスクと利益を事前に説明し、自由意思による書面での同意を得たことを明記します。
参加の自発性と撤回権 研究への参加が完全に任意であり、同意を拒否・撤回した場合も、治療やケアにおいていかなる不利益も被らないことを説明した事実を記載します。
個人情報の保護 対象者が特定されないようデータを匿名化し、厳重なセキュリティのもとで保管していること、所定期間後に適切に破棄する措置を講じたことを示します。
身体的・心理的負担の軽減 インタビューによる心理的負担や調査に伴う疲労を最小限に抑えるため、面接時間の設定や調査中断の基準を設けたことを明記します。

利益相反の開示

学術研究の公明性と中立性を社会に対して担保するために、「利益相反(Conflict of Interest: COI)」の適切な開示が求められます。

具体的には、研究の実施にあたって特定の企業や団体から研究費の提供を受けたり、奨学寄付金や講演謝礼などの経済的支援を受けたりした場合は、その事実を論文の末尾などで明確に自己申告しなければなりません。報告すべき利益相反が存在しない場合は、「本研究における利益相反は存在しない」という一文を明記することが、ほぼすべての学術誌で義務付けられています。

日本看護研究学会の学会誌の執筆要項には、COIがない場合の定型文やCOIがある場合の具体例など、実務的な指示が提示されているので、執筆の際は必ず確認しましょう。

関連記事:投稿アカデミー(4)Declaration of interest の書き方
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著者貢献度の明記

著者貢献度(Author Contributions)は、研究の透明性を高め、オーサーシップの混乱を減らすための重要項目です。複数の著者が関わる共同研究においては、すべての著者が研究プロセスのどの部分に貢献したのかを具体的に記載します。近年は、論文の執筆においてAIの支援を受けた場合も適切に開示することが求められています。

なお、日本看護研究学会の学会誌の要項では、「研究の構想およびデザイン、データ収集・分析・解釈、論文作成への関与、最終原稿確認」などの記載例が示されています。

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論文の構成要素と読者への伝わりやすさ

論文の質は、データの精度や考察の深さだけでなく、読者に伝わりやすく構成されているかによって大きく変わります。ここでは、論文を論理的に構成するための見出しと、読みやすさに影響する文体および句読点について補足します。

効果的な見出しの作成方法

大見出しから小見出しへと階層構造にすることで、情報の粒度が整理され、論文全体の論理的なつながりが生まれます。読者が文脈を見失わず、どのトピックについて論じられているのかを俯瞰しやすくなります。

具体的には、「方法」のセクションでは、研究デザイン、対象、データ収集、分析、倫理といった要素ごとに小見出しを設けることが推奨されます。「結果・考察」のセクションにおいても、主要なアウトカムごとに見出しを区切ることで読者が「目的→結果→意味づけ」を追いやすくなります。「考察」のセクションでは、主要所見から書き始めることで読者により伝わりやすくなります。

文体と句読点のルール

学術論文は、簡潔かつ明瞭な文体で執筆します。文末表現は、客観的で断定的な「である」調で統一するのが原則です。推測や確証のない伝聞表現(~のようだ、~らしい など)は極力避け、データに基づいた信頼性のある記述を心がけます。以下のポイントに注意しながら、読みやすく、読者の誤解を招かないような文体を意識しましょう。

・「という」「こと」などの形式名詞を多用しない
・冗長な言い回しを避ける
・文構造を複雑にする指示語を極力排除する
・一文に修飾語を過剰に詰め込まない
・一文の長さは50~100文字程度を目指す

なお、日本看護研究学会の学会誌の要項には文体と句読点についての規定があります。具体的には、読点は「、」ではなく「,(全角コンマ)」、句点は「。(全角句点)」を使用するよう指定されています。

看護論文の研究計画書の書き方

研究の第一歩は、研究計画書を作成することから始まります。研究計画書は、研究の目的や方法論を論理的に組み立てた設計図であり、研究が長期化しても方向性を見失わずに研究を完成させるのに役立ちます。

厚生労働省の「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針ガイダンス」でも、研究者等が研究計画を立案し、倫理審査委員会が審査を行うという枠組みが示されており、所属施設の倫理審査委員会から承認を得るためには研究計画書を提出する必要があります。

研究計画書を書くときは、タイトル、背景、目的、方法、倫理的配慮、参考文献といった基本項目を網羅します。初めから完璧な計画を目指す必要はなく、対象者の選定基準や分析手段の細部を埋めつつ、既存の優れた論文の構成や表現を参考にしながら、自身の研究内容に合致するよう精緻化していきます。計画段階で論理の破綻や倫理的な懸念が生じた場合は、後々致命的なミスにつながりかねないため、この段階で修正しましょう。

ジャーナル選定と論文投稿の手順

論文が完成した後は適切なジャーナルを選定し、投稿の手続きを行います。投稿先の選択は論文の採択率に直結するため、戦略的に判断することが大切です。投稿先の選定にあたっては、以下のポイントを総合的に比較検討しましょう。

・ジャーナルの対象読者層が自身の研究テーマと合致しているか
・インパクトファクター(IF)はどれくらいか
・査読から初回判定までの平均期間はどれくらいか
・オープンアクセス(OA)の有無と論文掲載料 など

関連記事:投稿アカデミー(3)雑誌選択

論文完成後にジャーナルを選定するのではなく、ある程度投稿先を絞り込んだうえで、投稿規定などを確認しながら論文の執筆を開始するのも有効な手段です。いずれの場合も、選定したジャーナルの投稿規程を熟読し、ファイル形式や投稿方法、文字数や図表のレイアウト、文体・句読点・見出しなどの様式、参考文献の記載方法や引用の形式などを準拠させてから原稿を提出しましょう。日本看護研究学会編集委員会が公開している、看護論文を新規投稿する際の「簡易マニュアル」も参考にしてください。

看護論文執筆に役立つ専門データベースの紹介

看護論文を執筆するための文献検索にあたっては、以下の専門データベースの活用がおすすめです。

医中誌Web
PubMed
CINAHL
Cinii

また、看護領域における参考文献の記載形式としては、米国心理学会(APA)のスタイルが最も広く採用されています。他者の著作物やデータを引用する際は、著作権法などの公正な慣行に従い、本文中の該当箇所に出所を明記しましょう。巻末には、正確な文献リストを作成します。Webサイト上の情報、特に個人ブログやSNS上の記述は、科学的な情報源として不適切です。公的機関の統計資料や査読を経た学術論文を一次情報として必ず参照しましょう。

看護論文は臨床上の疑問を検証し社会に還元する活動

臨床における看護師の鋭い気づきや現場の課題を、国際標準のガイドラインおよび適切な方法論に基づき、論理的に記述することで、優れた看護論文ができあがります。看護を実践するなかで得た知見を、論文という普遍的なエビデンスとして社会に還元することで、日常的な業務改善にとどまらず社会全体の「看護の質」の向上につながります。

参考文献

第4回 多職種のための投稿論文書き方セミナー 看護研究の進め方を知ろう!(基礎編) 小児保健研究(2021)80-3. p.377
研究論文の作成をめざして―若手研究者のための看護論文の書き方― 看護職のための研究論文の書き方
世界医師会ヘルシンキ宣言 人間の参加者を含む医学研究のための倫理的原則
厚生労働省 — 人を対象とする医学系研究に関する倫理指針ガイダンス
一般社団法人 日本看護菅家裕学会 — 論文投稿について
日本看護研究学会編集委員会 新規投稿 簡易マニュアル