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デルタシンク社による論文掲載料(APC)のトレンド分析(2024年)

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学術研究分野のコンサルタントサービスを提供するデルタシンク社は、2016年以降、毎年3月頃に主要な出版社の論文掲載料(APC)について調査・分析した記事を公開しています。出版社が価格を更新する時期を考慮し、毎年1月末時点のデータを取得して年間の変化を追跡しています。また、同種比較のために「割引なしのCC BY料金」を調査しています。翌年のトレンド予測も含まれており、OA出版の価格設定に関する包括的なレビューとして参考にすることができます。

2024年のAPCに関する分析は、“News & Views: Open Access Charges – Price Increases Back on Trend”というレビュー記事にまとめられ、2025年3月13日に公開されました。その要点をピックアップし、近年の傾向とあわせて解説します。

APC料金の上昇幅は前年と比べてやや緩やか

近年のAPC料金の推移としては、2020~2021年にかけてはインパクトファクターの高いジャーナルがOAオプションを導入したことで価格が上昇し、2023年にはインフレ率の上昇によってさらに大幅な価格上昇が観測されました。2024年は、前年の急激な価格上昇と比べればやや緩やかな上昇幅だったといえます。

2024年におけるフルOAジャーナルとハイブリッドジャーナルのAPC料金の傾向は以下の通りです。

フルOAジャーナルのAPC料金は約6.5%の上昇

2023年の記事では、2024年にはAPCの大幅な価格上昇が予想されていました。実際にはフルOAジャーナルのAPC料金は約6.5%上昇しており、インフレの影響によって約9.5%の大幅上昇であった2023年ほどではなかったものの、APC料金の高騰が継続していることがわかります。

フルOAジャーナルのAPCのうち最も高い価格は、2022年と2023年に引き続き8,900ドルのままでした。また、フルOAジャーナルのうち約31%は、APCを徴収していないこともわかっています。

ハイブリッドジャーナルのAPC料金は平均3%の上昇

ハイブリッドジャーナルのAPC料金は、2023年の同時期には4.2%の上昇でしたが、2024年は平均3%の上昇でした。

ハイブリッドジャーナルのAPCのうち最も高い価格は、前年より400ドル増えて12,690ドルでした。ハイブリッドジャーナルのAPCの最高価格は、3年連続で上昇傾向にあります。

フルOAジャーナルとハイブリッドジャーナルの論文数の推移

ハイブリッドジャーナルの方が論文数は多く、フルOAジャーナルの約2.6倍となっています。前年は約2.9倍だったことから、その差はやや縮まっていることがわかります。また、フルOAモデルの価格はハイブリッドモデルの価格の約64%であり、ここ数年でAPCの価格差も縮小傾向にあるといいます。

2025年は価格上昇率がさらに鈍化すると予想

2024年の分析によると、2025年はインフレ率の低下によって長期的なトレンドに戻り、APC料金の価格上昇率は鈍化していくだろうと予想されています。また、APCを徴収しないタイプのフルOAジャーナルが約31%あることも、価格上昇の緩和につながる影響のひとつと考えられています。APCを徴収しないフルOAジャーナルは、APC以外の何らかの方法によって資金提供を受けており、著者の負担や所属機関の助成の負担が軽くなります。価格上昇傾向がいつまで続くのか、高止まりするのか、あるいはAPCを徴収しないジャーナルが増加するのかなど、APCの推移については今後も注目が集まることでしょう。

なお、デルタシンク社が公開しているこのレビューはあくまで市場全体の平均価格について分析したものであり、分野によって平均価格が異なること、特定の出版社のポートフォリオにおける価格のばらつきが影響を与えやすいことには注意が必要です。

参考文献

Delta Think — News & Views: Open Access Charges – Price Increases Back on Trend
Delta Think — News & Views: Open Access Charges – Continued Consolidation and Increases
Curren Awareness Portal — Delta Think社による論文処理費用(APC)の価格上昇の分析(記事紹介)
Curren Awareness Portal — Delta Think社による主要出版社の論文処理費用(APC)に関する2024年の調査(記事紹介)

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