2027年度予算の概算要求における「科学研究費助成事業(科研費)」の要求額について
2027年度予算の概算要求において、文部科学省が「科学研究費助成事業(科研費)」として4,552億円を盛り込む方針であることが報じられました。この要求額は2026年度当初予算(2,479億円)の約1.8倍で、過去最大規模となります※1。
本記事では、これまでの科研費の予算額の推移と2027年度科研費概算要求の骨子、「17の戦略分野」と近年の注目トピックスであるAI利活用の推進について解説します。
科研費の予算額の推移
科学研究費助成事業(科研費)は、学術分野を問わず、研究者の自由な発想に基づく学術研究の発展を目的とした競争的研究資金です。独創的・先駆的な研究に対して助成するものであり、対象となる研究には専門家による審査(ピアレビュー)が行われます※2。
科研費の審査・交付を担う日本学術振興会は、予算額の推移を公表しています。これによると、基金化の導入によって予算額が大きく伸びた2011年度から数年間を除き、長年にわたって増加傾向にあることがわかります。近年は、補正予算を除き2,300~2,400億円で推移しています※3。
引用元:日本学術振興会. 科学研究費助成事業(科研費) 科研費データ. 科研費の予算額の推移 ※3
2027年度予算として、前年度の倍額に近い4,552億円もの概算要求を盛り込むことができた背景には、2026年7月に閣議決定された「日本成長戦略」において新設された「『強く豊かな日本』投資枠」があります。いわゆるシーリング(概算要求の上限額)を設けずに必要額を適切に要求できる仕組みであり、複数年度にわたる計画に基づく予算措置を基本とする枠組みです※4。
2027年度科研費概算要求の骨子
近年、研究論文数は世界的には増加傾向にある一方で、日本の研究力は相対的に低下傾向にあります。日本の研究力を強化し、国際的な競争力を高めるためにも、科研費の大幅拡充は欠かせません。このような背景のもと、2027年度の科研費の概算要求では、骨子として以下の5項目が挙げられています※1。
• 新領域種目の支援強化
• 国際的な研究の支援強化
• 若手研究者への支援強化
• 多様な研究の深化・発展
• 全面基金化による研究時間確保
なかでも、⑤の「科研費の全面基金化」は、これまで年度内に研究費を使い切らなければならなかった支援事業を基金化することで、複数年度にわたって長期的かつ柔軟に資金を活用できるようになると期待されています。具体的には、基盤研究(A)、学術変革領域研究(A)、特別推進研究という3つの研究種目において基金化を推進し、研究時間の確保、研究の進展・国際化などを可能とすることで、研究活動に集中できる環境の実現が望まれています※1。
科学技術関係のその他の概算要求
4,552億円を盛り込んだ科研費以外にも、科学技術関係ではさまざまな項目で予算が計上されています。例えば、「戦略的な科学技術外交・国際頭脳循環の強化」や「多様で厚みのある研究大群への支援」などは、今年度から新たに盛り込まれた項目です。また、以下の重要技術領域においては、研究開発推進のための予算が組み込まれました※1。
| 分野 | 2027年度 概算要求額 |
前年度予算額 | 前年度比 |
|---|---|---|---|
| 量子分野 (量子の有用性実現に向けた基盤の構築) |
265億円 | (新規) | +265億円 |
| マテリアル分野 (マテリアル・イノベーション創出に向けたマテリアル革新力の強化) |
307億円 | 181億円 | +126億円 |
| 健康・医療・バイオ分野 (健康・医療・バイオ分野の研究開発の推進) |
1,365億円 | 852億円 | +513億円 |
| 環境エネルギー分野 (フュージョンエネルギー実現に向けた研究開発・基盤整備) |
1,056億円 | 208億円 | +848億円 |
| 宇宙・航空分野 (宇宙・航空分野の研究開発に関する取組) |
3,801億円 | 1,552億円 | +5353億円 |
| 原子力分野 (原子力科学技術に関する体系的かつ総合的な取組の推進) |
2,180億円 | 1,474億円 | +706億円 |
| 防災・減災分野 (自然災害に対する強靱な社会に向けた研究開発の推進) |
278億円 | 121億円 | +157億円 |
| 海洋・極域分野 (海洋基本計画等に基づく海洋・極域分野の研究開発) |
623億円 | 400億円 | +223億円 |
| 新興・基盤技術領域 (ムーンショット型研究開発制度) |
577億円 | 16億円 | +561億円 |
これらの重点分野は、「日本成長戦略」において重点投資対象として掲げられた「17の戦略分野」と一致する部分も多く、国が投資を促進しようとしている分野であることがうかがえます※4。
引用元:内閣官房ホームページ. 日本成長戦略担当大臣. 日本成長戦略概要 ※4
科学技術分野におけるAIの利活用の促進
「17の戦略分野」のひとつに「AI・半導体」があるように、文部科学省の科学技術予算のなかにも「AI」に関連する項目が盛り込まれています。具体的には、「AI for Scienceによる科学研究の革新」として、AI駆動型研究開発の強化やAI基盤技術の研究開発、次世代研究インフラの構築などに対する支援として計3,789億円が盛り込まれました。前年度予算額(計564億円)の約6.7倍と、AI関連への支援額は大幅に伸びています※1。
なお、2026年3月に閣議決定された「第7期科学技術・イノベーション基本計画」のなかでも、「AI for Scienceによる科学研究の革新」が掲げられており、AIを活用した学術研究は国家戦略における重要領域として位置づけられていることがうかがえます※5。
具体的な内訳を見ると、「AI駆動型研究開発の強化」への支援が最も増加しており、前年度予算額が81億円だったのに対して1,932億円が盛り込まれました。科学研究力を底上げし、日本の強みを活かした最先端研究開発へのAI利活用を加速することで、世界をリードできるような研究成果の創出を目指します※1。
2027年度予算成立に期待
政府予算の今後のスケジュールとしては、12月下旬をめどに政府予算案が閣議決定された後、来年1月から3月にかけて開催される通常国会で審議され、年度内には予算として正式に成立します。正式決定にあたっては、概算要求で提出された額から減額されるのが一般的であり、従来の科研費から大幅に増加した4,552億円という概算要求もこのまま承認されるわけではないと考えられます。しかしながら、文部科学省の立てた予算は政府が掲げる成長戦略や科学技術・イノベーション基本計画の方針と一致する部分も多いことから、予算額の増加や基金化による長期的かつ柔軟な活用が期待されます。
参考文献
※1 文部科学省. 令和9年度概算要求のポイント.
※2 文部科学省. 科学研究費助成事業-科研費-.
※3 日本学術振興会. 科学研究費助成事業(科研費) 科研費データ. 科研費の予算額の推移.
※4 内閣官房ホームページ. 日本成長戦略担当大臣. 日本成長戦略概要.
※5 内閣府. 科学技術政策. 第7期科学技術・イノベーション基本計画 本文.









