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論文執筆に役立つAIツール4選

ChatGPTをはじめとするAIツールの躍進はめざましく、学術的な文章や論文の執筆のサポートができるツールも増えています。この記事では、論文の執筆や文献収集、翻訳や校正などに役立つAIツールを4つご紹介します。

Consensus — テーマ選定や問題設定、文献収集の初歩段階に役立つAIツール

URL:https://consensus.app/
知りたい情報について質問すると、査読済み論文が1億5,000万件以上も含まれるデータベースのなかからAIが当てはまる論文を探し出し、さらに「質問に対する答え」を抽出して短い文章に要約してくれるというツールです。トップ画面に“Evidence-Based Answers, Faster”と掲げられているとおり、論文というエビデンスに基づく回答をすばやく得られて、元となった論文にも容易にアクセスできます。完全無料で活用できるのも特徴です。

一般的な検索エンジンとは異なり、AIが研究論文から抽出した結果が表示されます。結果画面左上にある「Synthesize」ボタンを有効にすると、上位に表示された論文を統合してサマリーを回答し、イエス/ノーで回答できる質問の場合はグラフ形式で表示することもあります。

Consensusは、論文テーマの選定や問題設定、文献収集の初歩段階にも役立つツールです。ただし、制限事項として、このAIモデルは10%の確率で結果を誤って分類することがあると書かれています。そのため、生成された結果をそのまま信頼するのではなく、元となった論文を読みながら情報を精査する必要があります。

Connected Papers — 関連する文献を幅広く収集するのに役立つAIツール

URL:https://www.connectedpapers.com/
対象となる論文のタイトルまたはDOIを入力すると、AIが約5万件の論文のなかから関連するものを抽出し、関連度に基づいて視覚化してくれるツールです。円が結びついたようなグラフとして表示され、円の大きさや色、近さなどで関連度を視覚的に把握することができます。具体的には、円が大きいものは被引用数が多く、円の色が濃いものはより新しい論文です。入力した元の論文は紫の線で囲まれた円として表示され、関連度が高い論文ほどその近くに表示されます。完全無料で活用でき、アカウント登録も不要です。

Connected Papersは、これまで論文に記載された参考文献をたどったり、類似するキーワードで検索したりしながら地道に行う必要があった文献収集の効率化に役立ちます。

SciSpace Copilot — 論文読解をサポートする研究アシスタントツール

URL:https://typeset.io/
SciSpace Copilotに論文のPDFをアップロードすると、画面中央には著者や出版年など論文の概要や要約などが表示されます。画面右側には副操縦士(co-pilot)というAIとのチャット画面が表示され、対話形式で論文に沿った内容を回答してくれます。副操縦士との対話をアシストするクエリのサジェストもあり、例えば「結論」というクエリを指示すると、論文の結論が端的な文章で表示されます。論文全体はもちろん、一部分だけを指定して要約させることもできますし、論文中に含まれる画像や数式などを解説させることも可能です。論文を読み込み理解するためのアシスタントツールとして役立ちます。

日本語にも対応しているほか、Chromeの拡張機能として活用することもできます。無料のBasicプランの場合、利用できるアウトプットやダウンロード数に制限がありますが、月額8ドルの研究者向けプランや月額6ドルのチームプランなどを購読すると、多くの機能を無制限で利用できます。有料プランには、年3回または4回の剽窃盗用チェックも含まれています。

Elicit — 論文を引用して回答を生成する文献検索ツール

URL:https://elicit.org/
質問を入力すると、関連する論文を引用して回答を生成するツールです。主に文献レビューに活用でき、研究ワークフローの自動化に役立ちます。言語モデルが類似する意味の言葉を判別し、完全一致ではないキーワードを入力したとしても該当する論文を見つけることができます。キーワードフィルターを活用すると、特定の領域に限定して検索することも可能です。また、入力した質問に対してほかの質問をサジェストする機能もあります。

Elicitの最大の特徴は、論文のアブストラクトを読み取り、入力した質問に対する回答を簡潔なサマリーとして生成する点です。画面左には上位4本の論文をもとに生成したサマリーが表示され、画面中央には根拠となる論文のタイトルや情報が表示されます。さらに画面右にはそれぞれの論文の要約も表示されるので、文献の概要をすばやく把握できます。検索結果として表示された文献の情報はCSV形式などで出力でき、各種文献管理ツールにインポートできます。検索結果として表示された論文のなかから、自身の研究テーマに関連性が高い論文にチェックを入れることで、さらに関連性の高い論文へと掘り下げることもできます。研究テーマについて予備的な理解を深めるときや、その論文がテーマとどれくらいの関連性があるのかを把握する文献レビューにも役立つツールです。

日本語には対応していませんが、2023年5月時点では回数の制限等もなく無料で利用できます。

AIツールはあくまでサポートとして活用しよう

現在リリースされているAIツールのなかには、ベータ版のものやリリース直後で機能が不完全なものも含まれているので注意が必要です。AIが抽出・生成した情報を完全に信用することなく、元となる論文を確認しながら真偽を自分の目で確かめる必要があります。また、ジャーナルによっては論文の執筆にAIツールを活用することを制限したり、文献収集や文章校正のみに限定したりしているところもあります。あくまでAIツールはサポートとして使い、生成された結果をそのまま活用することのないよう注意しましょう。

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