「学術論文等の即時オープンアクセスの実現に向けた基本方針」により示された即時OAの義務化
公的資金の援助のもとで生み出された研究成果を誰もが迅速かつ自由に利用できるようにする「即時オープンアクセス(即時OA)」は、近年重要性を増している研究政策のひとつです。日本の即時OA政策の経緯と、即時OA義務化の対象について解説します。
日本の即時OA政策の経緯と理念
内閣府科学技術・イノベーション推進事務局は、2023年10月に「公的資金による学術論文等のオープンアクセスの実現に向けた基本的な考え方」を公開し、日本の即時OA政策についてまとめました。そのなかで、2025年度以降の公募分からは、「学術論文を主たる成果とする競争的研究費制度によって生み出された査読付き学術論文および当該学術論文の根拠データ」について、即時OAの対象とする方針が明示されました。
関連記事:「学術論文等の即時オープンアクセスの実現に向けた国の方針」と日本の即時OA政策の特徴
2024年2月には、この方針に沿って、統合イノベーション戦略推進会議が「学術論文等の即時オープンアクセスの実現に向けた基本方針」を策定し、公的資金を受けて行われた研究の学術論文等の即時OA化が義務付けられました。その理念としては、以下の3点が挙げられています。
・公的資金によって生み出された研究成果の国民への還元と自由な利活用の促進
・経済的負担の適正化
・研究成果の発信力の向上
即時OA義務化の対象について
即時OAの義務を負うのは、「公的資金のうち2025年度から新たに公募を行う競争的研究費の受給者」です。2025年の新規公募時点で即時OA義務化の対象となる事業は、以下の通りです。
・日本学術振興会(JSPS)/科学研究費助成事業
・科学技術振興機構(JST)/戦略的創造研究推進事業
・日本医療研究開発機構(AMED)/戦略的創造研究推進事業(革新的先端研究開発支援事業)
・科学技術振興機構(JST)/創発的研究支援事業
ただし、対象となる事業については、今後変更されたり新たに追加されたりする可能性もあるため注意が必要です。
これらの事業から助成を受けた場合に、即時OAが求められる成果物は、以下の2点です。
査読付き学術論文
電子ジャーナルに掲載された査読済みの研究論文、著者最終稿を含む)
根拠データ
電子ジャーナルの執筆要領および出版規程等において、透明性や再現性確保のために必要とされ、公表が求められる研究データ) なお、紙の学術雑誌に掲載された論文や、公表を前提としてないデータ、プレプリントのように査読を受けていない論文などは、即時OA義務の対象外です。
即時OAの時期の目安とエンバーゴ期間等の注意点
機関リポジトリ等の情報基盤へ即時掲載(即時OA)する時期の目安としては、学術ジャーナルに掲載した後、3か月程とされています。ただし、掲載誌のポリシーにおいてエンバーゴ期間が定められている場合は、期間終了後に公開することができます。掲載誌のポリシーに目を通し、エンバーゴ期間の設定や、著者最終稿であれば公開可能かなどをあらかじめ確認しておきましょう。
掲載誌にエンバーゴ期間が設定されている場合や、出版社または掲載誌のポリシーが存在せず不明瞭な場合、あるいはAPCの支払いや転換契約のための資金確保が難しい場合などは、即時OAの実施が困難である理由を各年度の実績報告の際に報告する必要があります。これらの理由が解消され次第、速やかに機関リポジトリ等の情報基盤に掲載し、即時OAを実施しなければなりません。
なお、内閣府は関係府省の協力のもと、資金配分を行う各機関の毎年度の実績報告に記載された書誌情報や査読の有無などの情報に基づき、即時OAの実施状況を調査するとしています。
即時OA義務化は研究の価値を最大化するための基盤
即時OAの義務化は、研究成果の社会還元や発信力の強化、研究の透明性と再現性の向上にも関連する重要な制度であり、研究者にとっての負担ではなく、研究の価値を最大化するための基盤としてとらえることができます。対象となる研究費や成果物、公開時期の目安やエンバーゴの期間の注意点などを把握し、適切に対応することが大切です。研究計画の段階からデータ管理を意識し、投稿の前には研究助成金の規定や必ずジャーナルの投稿規定を確認することで、スムーズな成果発信が可能となります。
参考文献
内閣府 — 総合科学技術・イノベーション会議 -— 公的資金による学術論文等のオープンアクセスの実現に向けた基本的な考え方
内閣府 — 統合イノベーション戦略推進会議決定 — 学術論文等の即時オープンアクセスの実現に向けた基本方針
内閣府 –「学術論文等の即時オープンアクセスの実現に向けた基本方針」(統合イノベーション戦略推進会議 令和6年2月16日決定)の実施にあたっての具体的方策
北海道大学 附属図書館 — 学術論文等の即時オープンアクセス義務化
千葉大学アカデミック・リンク・センター/附属図書館 — 学術論文等の即時OA義務化









