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機関リポジトリが注目される背景と、登録するときの著作権について

論文を入手するには、ジャーナルのウェブサイトからダウンロードするのが一般的です。しかしながら最近では、大学などの研究機関が作る「機関リポジトリ」でも論文が公開され、無料でダウンロードできる機会が多くなりました。機関リポジトリの役割や、気になる著作権の扱いについて紹介します。

オープンアクセスとして注目される機関リポジトリ

機関リポジトリの定義はさまざまですが、多くの研究機関では、「その研究機関に所属する研究者の成果をインターネットで公開するシステム」としています。研究者の成果とは、学術論文はもちろんのこと、日本語の紀要や教材なども含まれます。機関リポジトリに登録されたデータは、部外者でも無償で利用できます。

もともと機関リポジトリは、教材や博士論文など、学内資料の電子化と発信を目的に作られました。それが最近、特に欧米の研究機関では、所属研究者がジャーナルで発表した学術論文を登録、無料公開することが多くなっています。学術論文の価格高騰、オープンアクセスの流れを受けたものです。

日本でも機関リポジトリは以前からありましたが、学術論文を登録するかどうかは研究者の任意でした。ところが昨年ごろから、所属研究者の学術論文を原則登録するところが増えてきました。国民に対して研究成果を広く公開する方法として、機関リポジトリが利用されているのです。

京都大学図書館機構 – 「京都大学オープンアクセス方針」を採択しました
筑波大学 – 「筑波大学オープンアクセス方針」を採択

機関リポジトリに論文を登録するときは必ず出版社に確認する

ジャーナルに掲載された学術論文を、機関リポジトリなど別の場所で公開することは、著作権に抵触しないのでしょうか。

多くの機関リポジトリでは、著作権は研究機関に移転しないと規約で定めています。しかし、ジャーナルの出版社から掲載の許諾を受ける必要があります。実際の手続きは、論文の著者、または大学図書館職員などの代理人がジャーナルの出版社に連絡をし、条件などを確認したうえで許諾を受けるという流れになります。

この際、出版社がレイアウトを組む前の著者最終稿(ジャーナルに採択されたバージョンのもの)は機関リポジトリに登録可能だが、ジャーナルに掲載されたPDF形式そのものの登録は不可、とする出版社がほとんどです。このため、機関リポジトリで公開されている論文の多くは、やや簡素なデザインとなっています。また、掲載後一定期間がたてば登録可とするジャーナルもあります。

機関リポジトリで公開されている論文には、誤字脱字レベルのミスが見受けられる場合がありますが、内容はジャーナルに掲載されているものと変わりません。ジャーナルから購入する費用が高額な場合は、著者が所属する研究機関の機関リポジトリから論文を探るのもひとつの方法です。

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