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論文の著作権に関する2つの注意事例

論文が受理(または出版)されたときから、論文の文章やデータの著作権はジャーナルのものになります。つまり、自分が書いた論文でも、別の場所で掲載するときには出典を明記する必要があります。今回は、論文の著作権に関することで、しばしば疑問に挙がる2点について紹介します。

講演用のスライドで図表などを引用するとき

そもそも引用とは、公表された著作物を自分の制作物のなかに掲載することです。以下の条件を満たしていれば、著作物者の許可を得なくても引用できると、一般的に解釈されています。

(1)自分の制作物が「主」であり、引用された著作物は「従」であること
(2)引用すべき必然性があること
(3)引用部分が明確に区分されていること
(4)出典を明記すること

講演の場合、講演内容にそってデータを紹介するスタイルがほとんどのため、(1)と(2)の条件は満たしていると考えられます。論文から引用した図表のそばに出典を明記すれば(3)と(4)を満たします。
つまり、著作物者(ジャーナル)の許諾がなくても、講演用のスライドに論文の図表を掲載できます。ただし、自分の論文からの引用であっても、出典の明記は必要です。

国内ジャーナルに掲載した論文を海外ジャーナルに投稿する

国内ジャーナルに書いた日本語論文の反響が大きく、英訳して海外ジャーナルに投稿するよう勧められることがあるかもしれません。この場合、著作権は国内ジャーナルが所有しているため、自分だけで決めることはできません。
しかし、国際医学ジャーナル編集者委員会(International Committee of Medical Journal Editors)は、同じ内容の論文を別のジャーナルで出版(2次出版)することは、情報をより広く知らしめるという意味で有益であり、以下の条件を満たせば2次出版できるとしています。

(1)最初に掲載したジャーナルと、2次出版するジャーナル双方の編集部から了承を取ること
(2)2次出版するまでの期間は、双方の編集部と著者の話し合いで決めること
(3)2次出版する論文は、異なる読者層を想定していること
(4)2次出版する論文は、最初の論文の内容を忠実に反映していること
(5)オリジナルの論文の出典を明記すること
(6)タイトルには2次出版であることを明記すること

著作物の取り扱いは慎重に

ジャーナルに掲載された論文は、ジャーナルの著作物であり、著作権を侵害したときには「不正行為」と見なされます。公的機関の見解をもとに、慎重に対応しましょう。

参考資料

・公益社団法人著作権情報センター
Q. 他人の著作物を引用するときの注意点を教えてください。また、出所の明示はどのようにすればよいのですか?
http://www.cric.or.jp/qa/hajime/hajime7.html

・International Committee of Medical Journal Editors
Acceptable Secondary Publication
http://www.icmje.org/recommendations/browse/publishing-and-editorial-issues/overlapping-publications.html

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