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オープンアクセスジャーナルが変える査読の主体

オープンアクセスジャーナルの論文出版加工料と採択率

オープンアクセスジャーナルの特徴は、インターネットから無料で論文をダウンロードできる代わりに、論文著者が出版のための初期コスト(論文出版加工料)を負担することです。論文出版加工料は10万円から40万円ほど。この出版加工料が、出版社にとっては大きな収入源になります。これはつまり「論文を多く採択することを出版社は目指している」と言えます。そのため、通常の紙媒体のジャーナルに比べて、オープンアクセスジャーナルは論文の採択率が高いとされています。

しかし、論文の採択を優先するあまり、論文の質が玉石混交になるのではないか、大量の論文のなかから何を読めばいいのかわからなくなるのではないか、とオープンアクセスジャーナルの普及に難色を示す研究者もいます。

それぞれの出版前プロセスの違い

従来の紙媒体のジャーナルでは、誌面の制約上、投稿された論文を厳選しなければいけません。その選定プロセスが査読です。数名の第三者の専門家が査読をして、最終的には出版社の編集部が採択の可否を決めます。これが一種のフィルタリングとなり、新規性・有用性の高い論文のみが出版されています。

一方オープンアクセスジャーナルは、誌面の制約がないため、多くの論文を採択できます。査読は行われますが、科学的根拠や論理展開など、最低限の質を保証していることの確認が主な目的です。新規性・有用性が高くなくても、内容にさえ問題がなければ採択されます。

出版前評価から出版後評価へ

この「出版前評価」の点から比較すると、確かにオープンアクセスジャーナルでは質の担保が難しくなりそうです。

しかし、そもそも、この「出版前評価」が本当に絶対的な存在なのでしょうか。いずれの査読も、ごく少数の人間によって行われます。しかし、本来であれば論文の価値を判断するのは、世界中の研究者(読者)です。少数の査読者にとっては価値のない論文も、一部の研究者にとっては有用なデータとなる可能性があります。それを、一部の査読者や編集部が判断できるのかについては、疑問を挟む余地はあるでしょう。

論文の価値を真に決めるのは査読者や編集部ではなく、世界中の研究者です。つまり、本当に重要なのは「出版後評価」と言えるでしょう。オープンアクセスジャーナルも含め、現在ではオルトメトリクスなど、出版後評価の数値化がさまざまなかたちで試みられています。これは、従来の少人数の査読から、世界中の研究者が査読する、いわば「査読のクラウド化」と言えます。

オープンアクセスジャーナルの普及は、査読の主体が全ての研究者になるきっかけになるのかもしれません。

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