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海外でエルゼビア社のジャーナルにアクセスできない事態が続発する理由は?

論文を読むことは研究者にとって欠かせない行為です。大学などの研究機関に所属していれば、研究機関が包括的に出版社と契約しているため、自分でお金を払わなくても電子ジャーナルは読み放題、と認識されているのかもしれません。しかし諸外国では研究機関と出版社との間で価格交渉が決裂し、ジャーナルにアクセスできないという事態が起きています。その背景には何があるのでしょうか。

購読料の高騰とオープンアクセス化の方針

2017年に入って、ドイツ、ペルー、台湾では、エルゼビア社が発行する複数のジャーナルにアクセスできなくなっているという事態が起きています。エルゼビア社は、医学で高いインパクトファクターをもつ『Lancet』や、生物学で権威あるジャーナルの一つである『Cell』を始め、約2500のジャーナルを編集・刊行する出版社です。電子ジャーナルのコレクションであるScience Directも提供しています。

ドイツなどでエルゼビア社のジャーナルにアクセスできなくなった理由は、購読料の高騰とされています。

電子化が進めばコストが下がると、かつては期待されていました。しかし実際には、新興国からの論文投稿が急増し、出版までにかかる手間が増えてしまった結果、それが価格に反映されていると出版社は主張しています。

ドイツを含むEUは、2020年までに科学論文の全てをオープンアクセスにするという方針を2016年に掲げており、この方針に真っ向から衝突することも原因と考えられます。

日本も対岸の火事では済まされない

この海外の出来事は、決して対岸の火事ではありません。高騰するジャーナル購読料は、すでに日本でも大きな課題となっています。

大学図書館コンソーシアム連合が文部科学省に報告した内容によると、日本は円安の影響も受けて、ジャーナルの購読料の値上げ率はここ20年で年間7.8%にも上っています。一方で大学図書館の資料購入費は減少傾向にあり、厳しい財政が続いています。

この状況を受けて、出版社のジャーナル全てにアクセスできるパッケージ契約を解除し、利用の多いジャーナルに絞って個別タイトル契約に移行する研究機関がすでに現れ始めています。例えば、東邦大学は2016年にWiley社とのパッケージ契約を解除して個別タイトル契約に移行しました。

この状況打破のため、文部科学省はオープンアクセスの拡充、具体的には機関リポジトリ構築の拡充などを掲げています。また、海外の出版社への過度な依存から脱却し、日本発のジャーナルの強化も必要としています。

オープン化を目指すサイエンスと、商業の側面をもつ出版社と、どう折り合いを付けていくべきなのか。今後の動向が注目されます。

参考資料

(1) Scientists in Germany, Peru and Taiwan to lose access to Elsevier journals : Nature News & Comment
(2) In dramatic statement, European leaders call for ‘immediate’ open access to all scientific papers by 2020 | Science | AAAS
(3) 大学等におけるジャーナル環境の整備と我が国のジャーナルの発信力強化の在り方について(概要):文部科学省
(4) Wiley社の電子ジャーナルに対する当面の対応について(通知):東邦大学メディアセンター電子リソース情報