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無料で機能拡張が可能に!PubMedXで英語論文の検索・読解効率がアップ

文献検索において多くのデータベースが存在する今、研究者が求める情報を、世界中から効率よく探し出すことが可能になっています。日々新しい文献が登場し、よりタイムリーで的確な情報取集力が必要とされています。

壁を取り除く新しい機能「PubMedX」の登場

医学系学生や医師、研究者にとって、PubMedが非常に有用な文献検索サービスであることはもはや言うまでもありません。2020年に実施されたリニューアルによって、モバイルでの利用を想定した現代的な使用感、デザインが提供されるようになったり、検索結果の表示機能の向上、絞り込み、共有、保存などが実装されたりするようになり、より利用者のニーズに合致したものへと進化してきました。

しかしながら、そうしたリニューアルを経ても私たち日本でのユーザーにとってひとつのハードルが残されています。それは言語です。日常生活で日本語を使用することが多い中、画面に表示されたものをより早く読み込み理解することができるのも、日本語の方が多い方もいるでしょう。「今」情報が欲しいというシーンや検索量によって、「PubMedの翻訳」といったワンクッションを置くことで生じるストレスは、かなりあったのではないでしょうか。

そこで登場したのが「PubMedX」です。PubMedXは普段利用しているブラウザの拡張機能としてインストールすることで、文献タイトルや抄録の和訳を画面上に追加することができる機能です。表示されたページ全体を和訳するのではなく、英語表示を残したまま和訳を必要な箇所にのみ追加表示する方式です。これにより、翻訳ページと元のページを何度も行き来することや、元の表示を崩すことなく、いつもの見慣れた画面のまま、速やかに検索結果を読むことが可能になります。

医学系研究には不可欠とも言えるPubMedとは

数多くの文献データベースの中で医師や研究者にとって欠かせないのがPubMedです。PubMedとはNIH(National Institutes of Health:米国国立衛生学研究所)のNLM(National Library of Medicine:米国国立医学図書館)によって無料提供されている文献データベースです。世界80か国5,700誌以上の雑誌に掲載された、医学、歯学、薬学、介護、ヘルスケア、生物学など医学系の広範囲の分野の文献を扱うMEDLINE(Medical Literature Analysis and Retrieval System Online)が含まれており、日本の雑誌も170タイトルほどが収録されています。PubMedではMEDLINE以外にも、全文公開が義務付けられているNIH助成金での研究報告や、MEDLINE掲載前の簡易データとして追加・更新が日々おこなわれているPreMEDLINEも検索可能となっています。こうしたデータベースから、雑誌名や医学用語、著者名などのキーワードから、文献タイトル、著者名、誌名などの書誌情報、抄録を調べることが可能になっています。

PubMedXでできること

こうしたPubMedでの検索をよりスピーディーでストレスフリーにしたのがPubMedXです。まず検索ページでは、検索窓への日本語入力ができるようになっていて、自動的に英語変換されて検索が実行される仕組みになっています。

表示される結果については、文献タイトルは従来通り英語タイトルですが、そのすぐ下の行に和訳が追加して表示されます。また、掲載誌のインパクトファクターが表示され、インパクトファクターが高いものは背景色の緑色が濃く表示されることで、利用者にとって重要な文献をより見つけやすいようになっています。さらに表示された文献では、タイトル同様、英語表示での抄録のすぐ下に和訳が追加表示される形です。

画面右側のエリアには便利なリンク機能も追加表示されます。
PubMedXの開発会社であるエミュイン社の広告リンクの表示も加わりますが、
●表示されているページをGoogle翻訳するリンクボタン

●Elsevir社運営の文献管理システムであるMendeleyのウェブ版に表示の文献を追加するためのリンクボタン(ただし文献doiの明示があるものに限る)
●PubMed Centralでフルテキスト無料公開の文献であれば、それをGoogle翻訳で表示するリンクボタン
などが新たに使用可能になります。

なお翻訳機能に関して、Google翻訳テキストの1日の利用上限量に達した後は自動的にDeepLの日英翻訳機能に切り替わります。切り替えができないとGoogle翻訳の利用状況によってはエラーが発生することになります。予めユーザー固有のDeepLのAPIキーの設定が必要になるため、APIキーの取得と設定を行っておくとよいでしょう。

利用可能なブラウザ

PubMedXは、ブラウザの追加機能によって稼働させることができます。利用可能なブラウザは、Google Chrome、Microsoft edge、Mozilla Firefoxです。Google Chromeはウェブストアから、Mozilla FirefoxはADD-ONSサイトからインストールできます。インストール後はいつもの通りにPubMedを使うだけです。Microsoft edgeはMicrosoft storeに登録がないため、Google Chromeウェブストアからのアクセスになります。この場合は予め、他のブラウザ用の拡張機能をMicrosoft edgeにインストールするための設定を行っておく必要があります。

最後に

エミュイン社によると、PubMedX開発のきっかけは医師の日常の検索活用から生まれたものだといいます。そのような開発背景からも、医師や研究者からの機能追加の要望には積極的に応えていきたいとしています。

参考文献

エミュイン合同会社 PubMedX
Current Awareness Portal 2019.11.21 PubMedのリニューアル版“New PubMed”が利用可能になる:基本システムとしての稼働開始は2020年春を予定
群馬大学総合情報メディアセンター PubMed
東京慈恵会医科大学学術情報センター PubMedの使い方

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