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Nature Index 2022の上位5か国の紹介と日本における課題

大手学術出版社のシュプリンガー・ネイチャー社は、2022年3月に「Nature Index 2022 Big 5 science nations」という特別冊子を公開しました。Nature Indexとは、国別および企業・大学・政府機関・研究機関・NGOなどの機関別に研究成果をまとめているデータベースです。主要なジャーナルに掲載された論文の数に基づいて毎年ランク付けを行っており、この特別冊子では特に上位5か国について言及しています。

Nature Indexにおける上位5か国について

Nature Indexでは、調査結果を追跡するためにCountおよびShareという指標を用いています。このうちShareという指標は、国または機関による各論文への貢献度を2回以上カウントしないよう、著者の割合を考慮したものです。各論文の著者がそれぞれ等しく貢献したと仮定し、論文ごとに利用可能なShareの合計は1となります。論文に対する著者の貢献度を相対的に示したものといえます。

「Nature Index 2022 Big 5 science nations」によると、2020年12月1日~2021年11月30日時点のNature IndexにおいてShareが高かった国は、1位から順にアメリカ、中国、ドイツ、イギリスそして日本となっています。上位5か国のShareを合計すると、2015年から2021年までのShare全体の約7割を占めています。2015年以降、これらの上位5か国の順位は変わっていませんが、なかでも中国は物理科学分野および化学分野において大幅な成長を遂げています。

機関別のランキングを見ると、トップは中国科学院(CAS)であり、2位のハーバード大学と比べて2倍以上のShareを有します。3位にはドイツの非政府・非営利学術団体であるマックス・プランク協会、4位にはアメリカのスタンフォード大学、5位にはドイツ研究センターヘルムホルツ協会が続きますが、上位50機関のうち中国が16機関、アメリカが26機関とほとんどを占めています。日本の機関は上位50位まででいうと、15位に東京大学、34位に京都大学がランクインしています。

日本では東京大学が国際共同研究をリード

二国間の機関が共同執筆した論文について各Shareを合計し、機関同士のグローバルな連携について示したコラボレーションスコア(CS)という指標もあります。Nature Indexの上位5か国について上位3機関のCSを分析したところ、アメリカにおいてはハーバード大学が国境を越えたコラボレーションをリードしており、中国においては天津大学が重要な役割を担っていることがわかりました。日本では東京大学が国際共同研究をリードしており、ドイツのマックス・プランク協会、フランス国立科学研究センター、中国科学院と強く連携しています。

なお、今回の特別冊子では日本の国際連携プロジェクトとして、「T2Kコラボレーション」などが紹介されています。T2Kコラボレーションは、東京大学に本拠地を置くハイパーカミオカンデを用いた素粒子物理学実験であり、78を超える各国の機関から約500人もの物理学者およびエンジニアが参加するビッグプロジェクトです。

その他日本に関連するトピックス

Nature Indexが用いる指標の一つであるShareは、掲載雑誌の論文総数が年間においてわずかに変動することを考慮し、調整されます。調整後の指標はAdjusted Shareとよばれます。

日本のAdjusted Shareを見ると、2015年から2021年にかけて2割近くも減少しており、上位5か国の中で最も大きく減少しています。2019年以降、その減少幅はゆるやかになっているものの、日本の研究業績の低下を食い止めることが今後の課題といえます。そのためには、日本の研究機関が国際的な共同研究を増やし、各機関との連携を密にすることが重要です。

参考文献

Springer Nature — [プレスリリース] 日本は研究成果の減少に歯止め、世界的な連携を通じて科学大国5カ国は世界のリーダーとしての地位を固める
東京大学本部広報課 — Nature Indexにおける東京大学の国際共同研究への貢献
Nature Index 2022 Big 5 science nations

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