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論文指標に見る研究力低下の現状―令和4年版 科学技術・イノベーション白書より

2022年6月14日、文部科学省は令和4年(2022年)版「科学技術・イノベーション白書」を公表しました。今回の白書には「我が国の研究力 科学技術立国の実現」とタイトルされており、我が国における国際比較から、研究力の現状を整理・分析し、課題を提示するとともに、課題解決のための国の施策についても解説しています。白書は2部構成で、第1部はその年における話題の特集、第2部は施策の年次報告となっています。

論文指標の国際的地位の低下についての課題整理

第1部第1章「わが国の研究力の現状と課題」では、日本の研究力の現状が述べられています。ここ数年における我が国の研究力の低下については多くの指摘があり、深刻度を増していることは言うまでもありません。研究力を測る主な指標となる論文指標の低下は特に2000年代前半から続いていますが、この点について白書第1章で各節にて、論文数、Top10%補正論文数、大学等の研究者数、研究時間割合、研究開発費などのデータ推移を主要国と比較することで課題分析としています。そのなかでも「論文指標」について着目している第1章第1節をみていきます。

論文数/Top10%補正論文数の世界ランク

直近(2017年-2019年の平均)の論文数における日本の順位は第4位です。20年前(1997-1999年の平均)は第2位で、2000年代前半に第3位となり、その後2010年代前半に第4位となり低下が続いています。日本の論文数の年次推移としては、2005年の67,708から2015年にかけて減少し、その後は微増しています。直近のデータを国別に見てみると、第1位が中国、第2位がアメリカ、第3位がドイツ、そして日本、以下イギリス、インド、韓国、イタリア、フランス、カナダと続きます。

Top10%補正論文数においては、直近が第10位で、20年前が第4位でしたから、どれほどインパクトが低下しているのかがわかる結果となっています。日本のTop10%補正論文数の年次推移としては、一貫して減少傾向にあり、直近データを国別に見てみると、第1位が中国、第2位がアメリカ、第3位がイギリス、以下ドイツ、イタリア、オーストラリア、カナダ、フランス、インド、そして第10位が日本です。

組織別に見た論文数の推移

ここでは国立大学、公立大学、私立大学、その他大学等、国立研究開発法人等、企業、非営利団体、それ以外という組織別に論文数の推移を見ています。大学組織を見てみると、一貫して増加を続けている私立大学に対して、増加傾向にあった国立大学と国立研究開発法人等が2000年代半ばから減少し始めています。ただし、国立大学においては2016年から微増しています。企業においては1996年から減少傾向となっていて、これはバブル崩壊から5年後という時期との関連を示唆しています。

部門別・大学グループ別に見た論文数/ Top10%補正論文数の推移

日本の論文生産はその70%以上を大学等部門が担っているという現状があります。論文数シェアで次のようにグループ分けを行い、そのグループ別に2000年と2018年の論文数/ Top10%補正論文数それぞれの推移を見ています。第1グループと第3グループが減少、Top10%補正論文数においてはいずれのグループも減少していますが、減少幅が大きいのが第1グループと第3グループとなっています。 ·第1グループ:シェア1%以上の上位4大学(大阪大、京都大、東京大、東北大) ·第2グループ:シェア1%以上で上位4大学除く14大学(岡山大、金沢大、九州大、神戸大、千葉大、筑波大、東京医科歯科大、東京工業大、名古屋大、広島大、北海道大、慶応義塾大、日本大、早稲田大) ·第3グループ:シェア0.5%~1%未満の26大学(主に地方国立大学) ·第4グループ:シェア0.05%~0.5%未満の137大学

日独伊の大学論文数比較

2013年-2017年時点での、ドイツ、イギリスと日本との論文数比較も行っています。その結果から、他2か国に比べ、上位層の大学の論文数は多い、または同等との結果があるにも関わらず、それに続く層の大学の論文数が少ないこと、論文規模の小さい大学の数が多いという、同じ傾向があることが分かっています。

論文数増減の要因分析

1980年代からの論文数、研究者数、研究開発費のマクロデータ整備から行った分析によると、年代ごとにさまざまな要因の組み合わせによって論文数の増減の傾向が掴めていますが、特に近年の論文数減少傾向については、①教員の研究時間割合の低下、②教員数の伸び悩み、③博士課程在籍者数、④研究実施に関わる直接的な費用(原材料費など)の停滞といった要因が指摘されています。

これからの日本の科学技術はどうなっていくのか析

今回公表された「科学技術・イノベーション白書」では、第1部第1章で見えてきた課題に対し、国としての動きがまとめられています。第1部第2章から第4章までの概要を見ていきます。

第2章 我が国の科学技術・イノベーション政策

この章では、・科学技術・イノベーション基本計画など、日本の科学技術・イノベーション政策の変遷が述べられています。これによると、我が国の科学技術・イノベーション基本計画がスタートしたのは、平成8年からで、5年ごとに計画(進むべき方向)の見直しが行われています。現在は第6期であり、「Society5.0の実現と、総合知による社会変革、知・人への投資」の実現を目指す時期となっています。

第3章 研究力を支える人材育成・研究環境整備

この章では、大学の研究力強化に向けた新たな事業、研究人材に関する施策の強化、研究環境整備に関する施策の強化、そして国際頭脳循環・国際共同研究の戦略的な推進について述べられています。その背景には、優秀な研究者が所属機関の研究環境に左右されずに力を発揮できるよう、高水準な研究環境を整備することで、我が国の研究力の底上げを図りたいという意図があるようです。

第4章 イノベーション創出に向けた「知」の社会実装

この章では、イノベーション創出のための取り組みについて述べられています。研究基盤を整備し、研究力の底上げがなされたら、それをどのように社会に還元していくのか、基本的な取り組み例や、現在の国からの支援策等についてまとめられています。

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文部科学省 令和4年版科学技術・イノベーション白書 本文(PDF版)

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