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学術論文でよく用いられる4つのスタイルガイド

論文を執筆するにあたって遵守すべきガイドラインのことを「スタイルガイド」といいます。引用や参照の方法、参考文献の記載方法はもちろんのこと、略語、スペル、句読点を含む表記ルールや論文全体をフォーマットする方法などが詳細にまとめられています。特に、英語の論文においては国際的に共通したスタイルガイドがあり、著者たちがこれらを遵守することで、関連分野における学問的知識を共有するのに役立つとされています。

研究コミュニティや学術分野、ジャーナルごとにそれぞれのスタイルガイドが設けられていることもありますが、ここでは特に学術論文でよく用いられるAPAスタイル、MLAスタイル、AMAスタイル、シカゴ・スタイルについて概要をまとめます。

APAスタイル(アメリカ心理学会)

APAスタイルは、1929 年に心理学者および人類学者、経営者らのグループによって確立されました。学術論文を構成するさまざまな要素を体系的にまとめ、読みやすくするためのシンプルな一連の手順およびガイドラインとして整理したものです。アメリカ心理学会(APA)の公式スタイルガイドでありながら、心理学分野だけにとどまらず、教育学や社会科学、自然科学、人文科学など幅広い学術分野において活用されています。

APAスタイルには、以下の8項目があります。
・Paper Format(用紙フォーマット)
・In-Text Citations(本文中の引用)
・Mechanics of Style(スタイルの力学)
・Bias-Free Language(バイアスのない言語)
・Tables and Figures(表と図)
・References(参考文献)
・Grammar(文法)
・Publication Process(公開プロセス)

例えば、本文中に文献を引用する場合、APAスタイルでは引用された文献の著者の氏名と出版日(出版年)をかっこ書きで記載します。参考文献の一覧は著者の名前のアルファベット順に掲載し、その後に論文タイトルなどの情報をまとめることになっています。

APA STYLE公式Webサイト

MLAスタイル(アメリカ現代語学文学協会)

MLAスタイルは、1883年に設立されたアメリカ現代言語協会が推薦する、学術論文や講座研究論文を作成するときに用いられるスタイルガイドです。英語やその他の外国語、文学および文学批評、文化学を含む芸術および人文科学において、1世紀以上にわたって活用されてきました。

MLAスタイルには、以下のような内容がまとめられています。
・文法、句読点、略語、スペル、数字などについて
・見出し、リスト、タイトルページについて
・さまざまな情報源の出版物情報を見つける方法の詳細な例
・引用、言い換え、要約、および剽窃の回避に関する指示
・注釈付き参考文献の例 ……など
このほかにも、MLA形式で引用された文献リストを作成する手順や、単一の論文における複数の著者を引用する方法などさまざまなガイドラインが定められています。

本文中に文献を引用する場合、MLAスタイルでは著者の氏名と文献のページ番号をかっこ書きで記載します。出版媒体によって必要な出典情報が異なる点にも注意が必要です。なお、参考文献の一覧は著者の名前のアルファベット順に掲載し、ファーストネームを短縮せずに表記します。

MLA STYLE公式Webサイト

AMAスタイル(アメリカ医師会)

AMAスタイルは、1847年に設立されたアメリカ医師会がまとめた、医学、ヘルスケア、ライフサイエンスなどの学術分野に携わる著者・編集者に役立つスタイルガイドです。医学分野に限らず、科学分野のジャーナルの多くもAMAスタイルを推奨しています。
もともとは1962年に『米国医師会雑誌(JAMA)』の編集者が、ほかの編集スタッフたちのために作成した内部文書が始まりです。最初はわずか68ページにすぎませんでしたが、加筆と改訂を繰り返し、2020年3月には約1,200ページのボリュームの第11版が提供されています。なお、この第11版では「倫理的・法的問題」や「科学における不正行為」、「知的財産」などの項目も網羅されています。

AMAスタイルは全23章で構成されており、それぞれにさらに細かい規定が定められています。
1.0 Types of Articles(記事の種類)
2.0 Manuscript Preparation for Submission and Publication(投稿および出版のための原稿準備)
3.0 References(参考文献)
4.0 Tables, Figures, and Multimedia(表、図、およびマルチメディア)
5.0 Ethical and Legal Considerations(倫理的および法的考慮事項)
6.0 Editorial Assessment and Processing(編集の評価と処理)
7.0 Grammar(文法)
8.0 Punctuation(句読点)
9.0 Plurals(複数形)
10.0 Capitalization(大文字化)
11.0 Correct and Preferred Usage(正しく好ましい使用法)
12.0 Non-English Words, Phrases, and Accent Marks(英語以外の単語、句、およびアクセント)
13.0 Abbreviations(略語)
14.0 Nomenclature(命名法)
15.0 Eponyms(エポニム)
16.0 Greek Letters(ギリシャ文字)
17.0 Units of Measure(測定単位)
18.0 Numbers and Percentages(数字とパーセンテージ)
19.0 Study Design and Statistics(研究デザインと統計)
20.0 Mathematical Composition(数学的構成)
21.0 Editing, Proofreading, Tagging, and Display(編集、校正、タグ付け、および表示)
22.0 Publishing Terms(出版条件)
23.0 Resources(リソース)

本文中に文献を引用する場合、AMAスタイルでは引用順に番号を割り付けるのが特徴です。番号は、著者名の後に上付きのアラビア数字で示し、同じ文献を複数回引用したときは同じ番号が用いられます。そして、本文中で引用された番号の順に参考文献一覧をまとめる点が、APAスタイルやMLAスタイルとの違いです。 Oxford Academic — AMA Manual of Style

シカゴ・スタイル(The Chicago Manual of Style)

シカゴ・スタイルは、1890年に設立されたシカゴ大学出版局がまとめたスタイルガイドであり、1906年に初版が出版されました。アメリカにおいてよく使われているスタイルガイドのひとつで、2017年には1,000ページを超える第17版が発行されています。なお、2012年には日本語訳版『シカゴ・スタイル:研究論文執筆マニュアル』も刊行されました。人文科学分野の文献を引用する際に使用されることが多く、特に出版作品に対してよく使われます。

シカゴ・スタイルは以下の3つのパートから構成されています。
Part I The Publishing Process(出版プロセス)
Part II Style and Usage(スタイルと使用法)
Part III Source Citations and Indexes(出典の引用と索引)

シカゴ・スタイルの参照方式には、引用した順に参考文献に番号を付け、論文末尾では引用した順番で参考文献を列挙する脚注方式と、本文中で言及する際は著者の姓と発行年のみを記述し、論文末尾では著者の姓と発行年の昇順で出典を掲載するハーバード方式の2種類があります。

シカゴ・スタイル公式Webサイト

分野やジャーナルによってスタイルガイドを使い分けよう

ジャーナルによっては、独自のスタイルガイドを設けている場合もあります。各ジャーナルのホームページに、著者に向けたガイドラインが公開されていることが多いので、投稿前には必ずチェックするようにしましょう。

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