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エルゼビア社がScopusに生成AI機能を追加した「Scopus AI」のα版をリリース

Scopus(スコーパス)は、世界7,000社以上の出版社が出版するすべての分野の文献に対応している抄録・引用文献データベースです。その提供元であるエルゼビア社は、Scopusに生成AI機能を搭載した「Scopus AI」を開発し、2023年8月にはα版をリリースしたと発表しました。

Scopus AIの概要と主な機能

Scopusのデータベースには、世界7,000社以上の出版社が出版する27,000誌以上の学術雑誌、18億件以上の引用文献、1,700万件以上の著者プロフィールなどが含まれています。世界的に有名な科学者、研究者、図書館員など17名から構成される独立した審査委員会によって審査・選択されたコンテンツをもとに、Scopus AIは読みやすいトピックの要約を生成します。そのため、信頼性が高い結果が得られます。
Scopus AIには現在、次のような機能が搭載されています。

Scopus抄録に基づくサマリービュー

あらゆる研究トピックにおいて、簡潔かつ信頼できるスナップショットを得ることができます。これにより、研究者が文献を読む時間を節約できるのはもちろん、根拠となる学術参考文献も完備しているため、AIが誤った情報を生成するリスクも抑えられます。

Go Deeper Links

生成されたトピックスに関連するクエリが提案され、容易にアクセスできるのが特徴です。Go Deeper Linksによって、研究者は関連する分野をより広範囲に調査することができます。

自然言語クエリ

他の生成AIツールと同様に、自然な会話形式で質問することができます。

なお、検索結果を視覚的にマッピングし、関連する研究テーマの新たな視点を提供するグラフ表示機能については、近日追加予定とのことです。

完成版は2024年初旬にリリース予定

膨大な論文やデータを読み込んだり、誤情報を見極めたりする工程は、キャリアの若い研究者や複数の分野を横断的に研究する研究者にとって大きな負荷がかかります。また、大規模言語モデル(LLM)を活用した生成AIには、不正確な情報や誤解を生みだしてしまうという欠点がありました。Scopus AIは、信頼性の高いデータベースに基づいてAIが生成するため、情報の正確性を維持しつつ研究者の負荷軽減ができるとして期待されています。

エルゼビア社のMaxim Khan氏は、「Scopus AIによって研究者がなじみのないトピックについて短時間で理解したり、異なる分野の研究者と協働したりすることで、研究が学術的・社会的に与えるインパクトも大きくなる」としています。

エルゼビア社はさまざまな研究コミュニティと連携しており、α版のテストには世界各国にいる約15,000人の研究者が参加しています。Scopus AI 完成版のリリースは、2024年の初旬を予定しているとのことです。

参考文献

Elsevier — Scopus: 世界最大級の抄録・引用文献データベース
エルゼビア・ジャパン株式会社 — エルゼビア、生成AIでScopusを革新 世界有数の査読済み文献の抄録と引用データベースであるScopusに新たな生成AI機能を搭載し、 研究者により深い洞察を迅速に提供
Elsevier — Press release — Elsevier takes Scopus to the Next Level with Generative AI

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