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査読システムの現状と限界

論文がジャーナルで掲載されるためには、査読を経る必要があります。しかし、2017年に『Tumor Biology』誌で査読不正を理由に107本の論文を一斉に撤回するなど、査読不正が相次いで発覚しており、従来の査読システムの限界が指摘されています。

シングルブラインドとダブルブラインドの利点と欠点

現在の主な査読システムは「シングルブラインド・ピアレビュー」です。著者に査読者の名前は明かされませんが、査読者は著者の名前を知らされた状態で査読します。一方、最近導入が進んでいる「ダブルブラインド・ピアレビュー」は、著者も査読者もお互いの情報が知られない査読システムです。

シングルブラインドは、査読者は著者の情報がわかるため、著者の研究テーマを照らし合わせながら論文を査読できるメリットがあります。しかし、著者への偏見によって不等な評価を下したり、逆に著明な著者に対しては権威に配慮してしまったりするかもしれません。

その点、ダブルブラインドは、バイアスなしに査読できるといわれていますが、著者情報なしに論文に記載されている研究テーマを正確に理解するのが難しくなるという欠点もあります。また、研究分野が狭い場合には著者をある程度特定できてしまうことがあり、完全な匿名化は困難ともいわれています。

2012年の報告では、4000人以上の研究者へのアンケートの結果、多くの研究者が「ダブルブラインドが最も効率のよい方法だ」と回答しました。しかしながら、著者がシングルブラインドかダブルブラインドかを選択できるNatureブランドの査読システムを分析したところ、ダブルブラインドを希望した著者はわずか12%でした。また、シングルブラインドで査読が行われた場合の採用率は44%、ダブルブラインドで査読が行われた場合の採用率は25%と、大きく差が出たことも明らかになりました。

これらのことから、研究者の中では、ダブルブラインドが理想としつつも現状はシングルブラインドが好まれていることがわかります。

出版後査読の可能性

一方で、シングルブラインドにせよダブルブラインドにせよ、少人数による現状の査読システムそのものが透明性に乏しく、客観的な評価に限界があるという見方もあります。そこで、「出版後査読」と呼ばれるスタイルが提唱されており、主にインターネット上で論文についてオープンに議論する場が登場しています。pubpeerは最も有名なオンラインコミュニティの一つで、STAP細胞の研究不正が最初に指摘された場所として日本でも有名になりました。

出版後査読は、インターネット上で多くの研究者が論文を評価する、いわば「査読のクラウド化」とも呼べるものです。査読システムは変わるべき時代となっているのか、今後に注目です。

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