高被引用論文数の国内研究機関ランキング 2019年版
イノベーションを加速するための知見と分析を提供するためのグローバルリーダー企業Clarivate Analytics Japan(クラリベイト・アナリティクス・ジャパン)は、2019年4月11日に「インパクトの高い論文数分析による日本の研究機関ランキング」の2019年版を公表しました。クラリベイト・アナリティクス社では、各研究分野における被引用数が世界の上位1%に入る、卓越した論文を高被引用論文と定義しています。それらのデータを集計する際のデータ対象期間は、2008年1月1日~2018年12月31日の11年間となります。
総合分野では東京大学、京都大学、理化学研究所がベスト3に
クラリベイト・アナリティクス社による今回の分析は、高被引用論文数をもとに、世界の中で日本が高い影響力を持っている研究分野において、国内で特に存在感のある研究機関を特定する試みとなります。今回の分析で日本の高被引用論文の総数は、昨年と同様に世界で12位となりました。分野別では、分子生物学・遺伝学が全世界での10位圏外となり、10位以内にランクインしたのは昨年から1分野減少した7分野となっていました。
高被引用論文数を総合してみると、日本国内の研究機関では東京大学が全体の第1位で1474報、次いで京都大学と理化学研究所がそれぞれ918報と707報で東京大学を追うレベルとなっていました。また、総合分野のトップ20位の内訳をみると、大学が14校、大学以外の研究機関が6機関となっています。これらの国立研究機関のほとんどで、その高被引用論文の割合は日本全体での平均0.87%を上回っていました。
分野別の国内ランキングに特色みられる
研究分野別にみて、日本が全世界での高被引用論文数ベスト10位以内に入っていた分野は、化学(世界5位)、生物学・生化学(世界10位)、免疫学(世界8位)、材料科学(世界7位)、地球科学(世界10位)、物理(世界6位)、植物・動物学(世界8位)の7分野でした。
ここで特徴的なのは、前述の総合分野において国内上位20位以内にランクインしていない研究機関が、それぞれの分野での高被引用論文数における国内上位10位以内にかなり多く入っていた、という点です。例えば、生物学・生化学の分野では、情報システム・研究機構と国立精神・神経医療研究センターが国内研究機関の上位10位以内にランクインしています。免疫学では千葉大学、日本医科大学及び順天堂大学などが、地球科学分野では、海洋研究開発機構、国立環境研究所及び気象庁気象研究所などが国内上位10位以内に入っていました。
それぞれの研究機関の専門分野や特色を活かした研究を
世界で日本が頭角を示す7つの研究分野において、総合分野ではランクインできなかったものの各分野で国内上位10位以内に入っている研究機関がかなり多い事は、非常に興味深い事実だと思われます。そういった研究機関の中には、ある特定の分野において高被引用論文数が国内上位5位以内に入っているものも数機関みられているほどです。
このことから、我が国では今後、ある特定の分野に特化した研究を精力的に進めて行くことが、重要視されるのではないかと考えられます。例え全ての分野を総合した結果上位にランクインできなくとも、産業や環境問題などといった、特定の重要領域で貢献できるような研究を中心に行う研究機関の発展が望まれるのではないでしょうか?
全世界でみた総合分野での日本の高被引用論文数は、確かに12位という値となり、先進国の中では決して高い数字と言えないのは事実です。しかし、日本という国自体が得意とする専門分野それぞれにおいて、これから近い将来、さらなる発展を遂げて世界に大きな影響を与えるような研究を成し遂げる努力をすれば、日本の研究機関の価値というものが世界的にみて大きく上昇する可能性が期待できるでしょう。