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日本の科学技術とイノベーションの現状~今後の課題は?

もうすぐ2020年…。21世紀も5分の1が過ぎようとしていますが、これから迎える世界は資源の枯渇、食糧危機、環境破壊など単独の国だけでは対応できない問題が山積みになることが予想されます。そんな中、日本は「競争から共生」が求められる世界の中で科学技術やイノベーションの分野にどのような課題があるかについて、科学技術振興機構が見解を発表しました。
そこで今回は、日本の現状と今後の課題について詳しく解説します。

日本の科学技術とイノベーションの現状

これから迎える世界は単に問題が山積みになっているだけでなく、loT・AIの発展により職業にも大きな変化が生じると考えられています。ある見解によれば現在の子どもたちが大人になることには人口の65%はまだ存在していない新しい職業に就いており、今後20年の間に現在の職業の半数は需要がなくなる可能性があるとのことです。
このような現状の中、国際社会の中で生き抜いていくには知識・平和・開発のための科学だけでなく、「社会における科学と社会のための科学」の発展が望まれているのです。

日本は超高齢化社会を迎え、労働を担う世代や科学技術を学び発展させていく世代はどんどん減少していきます。現在に於いても、日本の論文数の順位は低下しており、科学技術やイノベーションの分野で世界に遅れを生じている状況です。その格差は今後も大きくなっていくことが予想されており、日本は厳しい時代へ突入すると考えてよいでしょう。

日本の今後の課題

では、国際社会の一員として貢献し、生き残っていくために今度の日本にはどのような課題があるのでしょうか?詳しく見てみましょう。

国際的科学者の育成

科学技術とイノベーションの分野で世界に貢献するには、その一端を担う科学者の育成が重要な課題となります。2018年の世界経済フォーラムによると日本の技術や人材の発展度・将来性に対する評価は世界16位と決して高くありません。特に、クリエイティブかつ主体的な人材育成の順位がひと際低いのが目立ちます。
その一因としては、博士課程に進む人口が減少し、企業の研究者の博士号取得者が先進国に比べて少ないことが挙げられます。また、アメリカをはじめとした海外での博士号取得者が少なく、知識の国際的流動がないことも原因の一つと考えられます。
今後は研究者が研究に従事できる環境を整えるとともに、海外での研究経験者を増やしていくことが課題となるでしょう。

研究に対する財源投資

企業の研究開発費はリーマンショックを契機に落ち込んだものの回復傾向にあります。しかし、アメリカや中国などと比べてその差は拡大していく一方。財源投資と論文数は比例するため、科学技術やイノベーションを発展させるためには安定した財源投資を行う必要があります。
2014年度の日本の科学技術と教育の歳出は5.4兆円と歳出総額の5.7%を占めていますが、中国は84.2兆円にも上り、その割合は18%となっています。日本では高齢化に伴う社会保障費が増大しているため科学技術と教育に充てられる費用は軽視されがちですが、世界に競合できる技術を開発していくには財源見直しも必要となるでしょう。

イノベーション創出の構造化

厳しい財源にある中、新たなイノベーションを作り出していくには特許制度の見直しやWPI、COIなどの拠点の形成が求められます。現在でもこれらの制度を整えることによって多くの成果が出ており、今後は産学連携強化やベンチャー企業への支援などを行いながらさらなるイノベーション創出の構造化が課題となります。

参考文献

科学技術振興機構 我が国の科学技術・イノベーション ~現状と課題~

  • 英文校正
  • 英訳
  • 和訳
※価格は税抜き表記になります