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令和元年度「科研費」の分配状況を分析~全体・研究種目別の状況~

「科研費」とは、文部科学省による科学研究費助成事業に於いて、社会科学や自然科学などありとあらゆる分野の学術研究を発展させることを目的として助成される研究資金のことです。もちろん助成を希望するすべての研究に対して付与されるわけではなく、研究計画など申請内容を厳しく審査した上で助成の可否が決定されます。医学分野においても得られる「科研費」によって研究に必要な人員・資材などが大きく異なってくるため、研究者たちはいかにして多くの「科研費」を得ようと試行錯誤しているのが現状です。

全ての研究者にとって関心の高い「科研費」。そこで今回は、令和元年度の「科研費」の分配について詳しく解説します。まずは第一弾として全体・県種目別の状況を見てみましょう。

科研費分配の全体概要

令和元年度の科研費新規応募数は前年より1.8%減少しているものの10万1857件に上り、その中の2万8892件が採択されました。応募数自体は平成24年以降最も少なくなりましたが、前年度よりも科研費自体の予算がアップしたことに伴い、採択数自体は前年度より12%も上昇しているとのことです。継続分を含めた採択数全体は7万8650件であり、約2154億円が分配されています。

また、若手研究者を支援する目的の「若手研究」への分配については、新規応募数は1万9590件。そのうち40%にあたる7831件が採択されています。一方、学術研究の多様性を支え、すそ野を広げていくことを目的とした「基礎研究(C)」は4万5758件の応募があり、採択率は28.2%、国際競争化での研究の高度化を目指す「基礎研究(B)」の応募は1万1396件で採択率は29.2%との結果でした。

予算が拡大されたことに伴い、各部門で採択率のアップが認められたのが令和元年度の科研費分配の特徴と言ってよいでしょう。ただし、1課題あたりの平均分配額は210万7000円となり、前年度より2.9%減少しています。

研究種目別の状況

研究種目別に見ると、最も科研費(新規採択+継続分)の分配が多かったのは基礎研究で、その総額は約1065億円に上ります。しかし、1課題あたりの平均分配額は207万8000円と平均よりも少なく、幅広く多くの課題に対して助成がなされていることが伺えます。

一方で、最も1課題あたりの平均分配額が高かったのは特別先進研究で、その額は8075万円にも上ります。特別先進研究の分野は研究にかかる費用が莫大であるため高額な分配となっていますが、国もこの分野の進展に力を入れていることが分かります。

しかし、これまでの体系や方向を大きく変え、今後飛躍的に発展する期待が持てる挑戦的研究の分野に対する分配額は81憶5850万円であり、新規採択率が12.8%と低めであることも目立ちます。様々な研究分野において中国など新たな研究大国が著しい成果を上げていく中で世界をリードする研究を展開していくには挑戦的研究に重きを置いていくことも必要でしょう。

参考文献

文部科学省 令和元年度科学研究費助成事業の配分について

  • 英文校正
  • 英訳
  • 和訳
※価格は税抜き表記になります