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研究活動における不正行為とは~不正行為に対する措置と不正行為を起こしやすい状況

科学研究の分野では、予算や人材の確保といった大きな課題があり、日本のみならず世界中で熾烈な競争が繰り広げられていますが、それでも正しくないことを行うのは、科学者としてやってはいけない行為です。

前回は科学研究活動における不正行為についてお伝えしましたが、今回は不正行為に対して実際に撮られる措置と、「気づかない間に不正行為となりえる事例」についてお伝えします。

不正行為に対する国としての「措置」

発表された論文や研究結果に不正行為があった場合、国はそれを告発する窓口(匿名での告発可)を設けることを求めており、告発内容に従った調査を行い、その結果を公表することになっています。そして、不正行為に対して「責任の所在」を明確にするとともに、以下に示すような「措置」が取られます。

●大学等の研究機関の場合:体制不備等が認められた研究機関に「管理条件」を付し、その後に履行されない場合、または正当な理由なく調査が遅れた場合は、間接経費を削減
●研究者個人の場合:競争的資金等の返還、それ以降の申請を制限するとともに、組織内部規定に基づく「処分」を行う

いずれの場合も、現在や未来の研究が行えなくなる可能性があります。

気づかないうちに不正行為と成り得る事例

では、実際にどのようなケースが「不正行為」となりえるのか、3つのケースから考えてみます。

ケース1:画像の撮り方が不正につながるケース

研究者Aはタンパク質に関するとある実験を行い、その結果を光学カメラで撮影したが、自分の想像とは違う、いつもは見られないバンドの位置に、うっすらと非特異的なシグナルが現れた。研究発表の日にちも迫っている中、研究者Aは自分の実験技術の高さを示すために「より美しい」画像にしたいと考え、撮影時の露光条件を調整した、いわゆる「白飛び」で撮影しようとした。

これは、ねつ造、改ざんに該当する「不正行為」と見なされる可能性があります。

ケース2:「画像の反転」に後から気づいた

研究者Dは、とある科学雑誌に投稿した論文に対し、編集者Eからの指示を受け追加実験を行った。その結果をまとめ論文を再投稿する直前に、編集者Eからの指示とは違うところに、反転した画像を使用していることに気付いた。そのままでも論文の主旨には影響しないため、再投稿の際に写真のミスを申告するかどうかで悩んだが、研究者Dは「やはり間違いはいけない」と思い直し、気付いた画像も修正して再投稿した。

これは、間違った画像が「最終的な論文」となっていた可能性があり、改ざんやねつ造と捉えられる可能性があります。

ケース3:予測と違うデータを隠す

教授Gは自分の研究室の研究者Hに、ある実験を行うよう指示し、そこから得られるであろう結果について説明した。研究者Hは指示通りに実験を行ったが、教授Gが予測したような結果になることが少なく、むしろ違う結果の方が多かった。研究者Hは、教授Gの予測に近しいデータのみを抽出して、報告した。

これは、都合の良い結果のみを利用したことになるため、他の研究者は再現できない実験結果となってしまいます。

学者として不正行為を起こさないために

あえて不正行為を行う研究者は論外ですが、研究者として「不正行為はしない」と思っていても、ちょっとした認識の違いが、気づかないうちに不正行為につながってしまう、というケースはあります。 「当たり前のことをする」という気持ちは一番大事ではありますが、それとともに「周りからのチェック機能」も必要になるかもしれません。

参考文献

研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン
AMED 研究公正に関するヒヤリ・ハット集 1.捏造、改ざん、盗用
AMED 研究公正に関するヒヤリ・ハット集 2.データの収集・管理・処理
AMED 研究公正に関するヒヤリ・ハット集 7.研究データの信頼性、再現性等

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