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研究活動における不正行為とは~不正行為を起こさないようにするために

日本のみならず、世界中でも、科学研究分野における競争は繰り広げられていますが、それでもやはり「人として正しいかどうか」も常に問われています。

前回は、「気づかない間に不正行為となりえる事例」についてお伝えしましたが、今回はその回避方法についてお伝えします。

「気づかないうちに不正行為?」陥りやすい罠と回避策

まずは、前回お伝えしたうち2つのケースについて、不正行為となることを回避したのかを考えてみます。

実験結果の画像は「ありのまま」で

ケース1の「画像の撮り方が不正につながるケース」では、研究者Aの「自分の実験技術をより良いものに見せたい」という気持ちにより、「白飛び」画像の撮影という方法を思いつきました。もちろん、「白飛び」自体が悪いということではありませんが、敢えて「白飛び」とすることで、本来見えているものを「わざと見えなくする」という行為が、不正行為につながる可能性がありました。

研究者Aはもともと、実験手技に対して自信があり、技術力を誇示したいという気持ちもありました。また研究者としては未熟であり、検出された非特異的なシグナルが「新しい発見かもしれない」とは考えつかなかったのです。ここに罠があったのです。

しかし、研究者Aは教授Bとのディスカッションの機会を得られたことで、「新しい発見につながるかもしれない」という考えにシフトできたため、「不正行為」を回避することができました。

気づいたら素直に申告

ケース2の「画像の反転に後から気づいたケース」では、研究者Dの真面目さが、不正行為を回避したといえるかもしれません。

仮に「画像の反転」があっても、研究そのものの主旨に変わりが無く、雑誌の編集者からの指摘も無い場合は、ともすれば「そのままでも大丈夫ではないか」と考えがちです。最初の投稿時、文章の推敲に気をとられていたのであれば、数枚並べても違いが分かりにくいような画像なら、反転していることにも気づきにくいのではないでしょうか。ここにこのケースでの罠があります。

しかし、研究者Dは「もしかすると論文の受理に悪影響があるかもしれない」という思いを抱きつつも、論文の正確さにこだわり、編集者Eへ素直に申告したことで、事なきを得ることができました。

予測と違うデータが出てもきちんと申告することが大事

上記2つのケースは、いずれも「自分が主たる研究者だった場合」ですが、では「上司からの命令で実験を行う」場合についても、考えてみましょう。前回お伝えしたケース3、「予測と違うデータを隠す」についてです。

このケースでは「教授がこう言っているから、このデータを出さないといけない」と、研究者Hが思い込んでいたことに問題があります。もしかすると、教授Gからのハラスメントなどを恐れているかもしれませんし、研究者Hは研究者として未熟だったのかもしれません。ここにこのケースの罠があります。

しかし、実験前の仮説がどうであれ、実験は「再現性のある結果」が重要であり、「(再現性が無いのなら)仮説通りの結果は得られなかったとすること」も、研究結果として重要であることを忘れてはなりません。

科学研究分野における「正しい行為」を常に考える

科学研究とは、真実の探求を積み重ね、新たな知を創造していく営みであり、不正行為はこうした「科学の本質」に反するものです。人々の科学への信頼を揺るがすだけではなく、科学コミュニティとしての信頼を失い、研究者自身の存在意義をも否定してしまいます。

科学研究分野は、社会の信頼と負託の上に成り立っていること、そして厳しい財政事情にもかかわらず、先行投資として研究開発が成り立っていることを忘れずに、新しい未来を切り拓いていきましょう。

参考文献

研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン
AMED 研究公正に関するヒヤリ・ハット集 1.捏造、改ざん、盗用
AMED 研究公正に関するヒヤリ・ハット集 2.データの収集・管理・処理
AMED 研究公正に関するヒヤリ・ハット集 7.研究データの信頼性、再現性等

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