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推薦査読者を選ぶ際のポイント

学術ジャーナルに掲載される論文は、科学的な妥当性や論理性を担保するためにピアレビューを行い、正当かつ公平に評価されています。基本的にはジャーナルの編集者が2~5名の査読者を指名しますが、その候補として、論文の著者に数名の推薦査読者を挙げるよう求められることがあります。推薦査読者を選ぶ際のポイントと、推薦理由をどのように書くべきかを解説します。

なぜジャーナルは著者に査読者を推薦させるのか

学術ジャーナルに論文を投稿する際、査読者として推薦したい研究者の氏名や連絡先を入力するよう求められることがあります。著者は「推薦査読者」を提案するほか、何らかの理由で査読を拒否したい研究者を「除外希望者」として挙げることができます。

ジャーナルの編集者は、著者が推薦した研究者に必ずしも連絡を取るとは限りません。あくまで査読者を選定するプロセスに必要な参考情報であり、最終的には編集者が候補者を選び、査読者を決定します。
査読者を選定するにあたって、ジャーナル側が著者からの推薦を求める目的は大きく2つあります。

査読者不足

論文を評価するのに適した査読者を見つけることは難しい作業であり、時には査読プロセスを遅らせてしまう原因にもなります。その分野に精通した研究者を把握している著者から提案してもらうことで、適した査読者を見つけやすくなり、査読プロセスの迅速化することにもつながります。

著者の利益のため

ジャーナルの編集者がその論文の分野や専門知識に精通していない場合、否定的な視点で査読を行う可能性のある査読者が意図せず選出されてしまう可能性もあります。ジャーナルに適切な査読者の候補を推薦し、ジャーナルの編集者に適切な情報を提供することは、著者にとってもメリットのあることなのです。

推薦査読者を選ぶ際のポイント

自身の論文の査読者候補としてどのような研究者を推薦すべきか、逆に、推薦すべきでないのはどのような研究者か、ポイントをいくつかご紹介します。

推薦査読者としておすすめの研究者

・同じ専門分野で研究しており、著者の研究内容を理解できる研究者
・公平かつ建設的な視点でフィードバックできる研究者
・同じ分野や類似する分野で研究を行っている現役の研究者
・自身の論文を書く際に参考にした論文の著者
・学会や研究会などで見かけた研究者

査読者を推薦するにあたって、その研究者の氏名だけでなく連絡先を提供するよう求められることもありますが、必ずしも知り合いの研究者を推薦しなければいけないわけではありません。むしろ、次で解説するように、著者自身と近すぎる関係の研究者は推薦を避けるほうが望ましいです。推薦査読者の氏名や連絡先は、公開された論文や大学・研究機関のWebサイトなどで調べることができます。

推薦を避けるべき査読者のポイント

・共著者
・共同研究者
・同じ大学や同じ組織に所属する研究者
・かつて著者が指導を受けていた研究者
・配偶者や血縁関係のある研究者

多くのジャーナルでは、共著者や共同研究者、同じ組織に属する同僚などを査読者として推薦しないよう条件が提示されています。ジャーナルによっては、共著者や共同研究者が査読者として認められる場合もないとはいえませんが、その判断基準はさまざまです。何年も前に書いた論文の、複数いる共著者の一人という程度であれば、推薦査読者として認められる可能性もあります。また、配偶者など著者と関係性の近い人物も推薦するのは避けましょう。

・同じ研究テーマの競合相手である研究者(発表前の研究成果を知られないようにするため)
・同じ研究テーマではあるが、異なるアプローチや意見をもつ研究者

これらの研究者は、著者の研究内容に対して否定的な意見や偏見をフィードバックする可能性もあり、公平な査読が難しいことがあります。推薦査読者とは別に、候補に入れてほしくない査読者を「除外希望者」などの形で情報提供することで、ジャーナルに意思表示することもできます。

そのほか、利益相反のある研究者についても推薦することはできません。推薦査読者を提案する際は、ジャーナルのガイドラインに従い、利益相反がないことを示す声明書を提出する必要があります。

その他の注意点

研究者のキャリアにこだわらず、ベテランから若い研究者まで幅広く提案することが望ましいですが、現在は研究に従事していない名誉教授は避ける方がよいでしょう。また、あまりにも著名すぎる研究者は、多忙がゆえに査読を引き受けるのが難しい場合があり、推薦査読者として提案しても実現が難しい可能性が高いです。h-indexを参考に、あまり指数が高くない研究者を推薦査読者として挙げるのがおすすめです。

さらに、以前に同じジャーナルに出版したことがある場合は、過去の論文の査読者を再度提案するのではなく、可能な限り別の推薦査読者を提案するほうがよいでしょう。編集者は、査読者のネットワークを広げ、新たな査読者から新鮮な知見を得たいと考えています。

推薦理由の書き方

ジャーナルによっては、その研究者を推薦査読者として推薦した理由の提示が求められる場合もありますが、詳細に説明する必要はありません。

例えば、
・この研究者は、○○分野の専門家です
・この研究者は、同じテーマで過去に論文を発表しています
・この研究者は、類似する○○という分野で研究しています
・この研究者は、○○分野の研究において助成金を得ています
など、簡潔に理由を書き添えましょう。

学会や研究会でのつながりも重要

推薦査読者として提案する研究者は知り合いである必要はありませんが、学会や研究会などを通して同じ分野の研究者同士でつながりをもつことも、推薦候補の研究者を幅広く知るためには有効です。どのような研究者を推薦すべきか悩んだときは、大学の同僚や上司、同じ研究分野の先輩や指導者に相談してみましょう。適切な推薦査読者を提案できれば、査読プロセスの短縮に役立ちます。

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