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Nature Index 2018 Japanで明らかになった日本の研究競争力低下と回復へのヒント

Springer Nature社が作成する「Nature Index」によると、2016年から2017年の1年間で科学研究における日本の競争力はさらに低下したことが示されました。一方で、競争力を取り戻すヒントとなる研究機関の存在も明らかになりました。

低下を続ける日本の研究の競争力

Nature Indexでは、主要68誌の自然科学系学術ジャーナルに掲載された論文数をもとに研究の競争力を算出します。算出方法は以下の通りです。まず、1つの論文について、共著者の割合に応じて国や機関にポイントを割り振ります。例えば、A国の著者が3人、B国の著者が2人の論文では、A国に0.6ポイント、B国に0.4ポイントが与えられます。さらに、宇宙物理学は論文数が多いため、係数0.2をかけて他の分野と平等に扱うようにします。Nature Indexでは、この指標をWFCと表記します。

日本は2012年から2016年にかけてWFCが19.6%減少していましたが、今回発表された2016年から2017年ではさらに3.7%減少して5位でした(最新のデータはこちら)。つまり、2012年から2017年にかけて22.4%も減少したことになります。

減少した原因の一つは、中国の台頭です。中国は2012年から2017年にかけて67.9%も増加しているため、日本も含めた他国が相対的に低下するのはある程度の必然です。しかし、3位のドイツは2012年から2017年にかけて減少率が8.4%、4位のイギリスの減少率が6.3%であり、日本の22.4%という数字は特に顕著と言えます。

正規化した指標で見えたヒント

一方で、この低下を食い止めるヒントとなるかもしれない報告もあります。それが、日本の各研究機関について正規化したWFCで評価したものです。正規化したWFCとは、ある研究機関における2012年から2017年のWFCを、エルゼビア社のスコーパス(Scopus)データベースに収録されている同機関からの自然科学論文数で割ったものです。ある研究機関が発表した全論文のうち、WFCの計算対象となる主要68誌(引用されやすいジャーナル)に掲載された指標とも言えるものです。

この指標では、1位は学習院大学、2位は東京大学、以下に甲南大学、京都大学、青山学院大学、大阪大学、奈良先端科学技術大学院大学、沖縄科学義塾大学院大学、東京工業大学、名古屋工業大学が続きました(詳細はこちらのページ)。研究費が豊かなところばかりではないことが明らかになったのです。

この指標は、「どのくらいの割合で、引用されやすいジャーナルに論文を掲載できているか」を示すと考えることができます。インパクトファクターの高いジャーナルへの掲載と論文の品質は必ずしも一致しませんが、これらの研究機関がなぜ主要ジャーナルへの論文掲載の割合が多いのかということを検証し、他の研究機関も実践することで、日本全体の研究発表の質が上がって日本の研究競争力低下を回復できる可能性があります。

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