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論文再投稿の基本 -査読者へのレスポンス-

学術論文を投稿すれば、必ずといってよいほど、その学術雑誌の編集者や査読員たちから、沢山の修正要求などを突き付けられた形で返却されてくるものです。査読員たちのこういった要求に対応するのは、とても煩雑なことのように思えますが、この対応を適切に行えるか否かがその論文の採否を大きく左右します。今回は、査読員らに対してどういったレスポンスを行うのが理想的かについて考えてみましょう。

アクセプトの可能性があればコメントに真剣に対応を

雑誌の編集長からレターが送られてきた時、アクセプトされる可能性があるか否かということを判断する必要があります。実際に論文原稿を投稿しても、その内容がその学術雑誌のメインテーマに合わない、内容的にその雑誌のレベルに追いついていない、あるいはテーマは良いのだがデータの数自体があまりにも少な過ぎる、などといった理由でリジェクトされてしまう場合が多くあります。

「内容的には十分に掲載価値があり、いくつかの細かい修正を加えればアクセプトできる」あるいは「複数の査読員らからの要求にきちんと対応を行えば、もう一度審査を行ってもよい」などといった好意的なコメントが返ってきた場合は、その論文がアクセプトされる可能性が十分にあります。その場合には、査読員らからのコメントに誠実に対応をすることにより、論文の質を高めることができるので、著者にとってもメリットがあります。

査読員らのコメントに対応する時の基本

<それぞれの査読員からのコメント全てに対応すること>
複数の査読員から沢山のコメントが付いた場合、まずは混乱を避けるためにもそれぞれの査読員のコメントを全てコピーし、コメントの一つ一つに番号あるいは記号を付しておくなどし、対応すべきコメントがどの程度の数なのかを把握することが望ましいです。そして、論文をアクセプトさせるために最も重要なことは、全ての査読員のコメント一つ一つにもれなく対応して返事を送ることです。もれなく対応するというのがどういうことかというと、それぞれのコメントを受けて自分自身が具体的にどういった修正を加えたのかが、よく分かるような返事を送るということです。

<従えないようなコメントについては理由を必ず説明すること>
必ずしも、コメントの全てに「従わなければならない」という意味ではありません。コメントの中には、査読者本人の理解不足や勘違いなどからくる、的外れなコメントもよく含まれているからです。そのようなコメントには、従う必要はないのですが、ここで重要な点は、そういったコメントを無視するのではなく、きちんとコメントそのものに対応した返事をすることです。そして、返事の中でなぜそのコメントに従えないのかが相手に理解してもらえるような、分かりやすい説明をする必要があります。

また、内容に対するコメントとは別に、査読者がNative Englishでなく英語力が不足していることもあります。査読者のコメントに明らかな英語のミスがありながら、「英語が悪い」と言われた経験を持つ著者もおられると思います。投稿先と提携している校正会社の利用を勧められた経験を持つ著者も多いと思います。そんな場合、英語は色々な表現が可能ですから、推敲という意味合いを兼ねて全体の英文を再度校正して提出するのが、アクセプトへの近道です。

<データ不足の指摘には前向きな対応を>
査読者からデータ不足などを指摘された場合は、特に時間や労力の掛からない単純な追加実験などで補えるような指摘であれば、大至急追加実験を行ってデータ不足を補ったほうが得策です。他方で、そのデータ不足を補うための実験に多大な時間や労力を費やさなければならないような場合は、その指摘をしてきた査読者に対し、そういった重要な指摘をしてくれたことに感謝の意を表しながら、「今後の研究を発展させながら検討していくつもりである」という意思を強調して、うまくかわすという手段も有効です。

ほとんどの学術雑誌では、査読員というものは、それぞれの学問分野に適切な貢献をしてその分野の質を向上させるために、無償で論文原稿の査読を行ってくれていることは確かなのです。査読者らにレスポンスを送る時は、多忙の中でそういった仕事を真面目に引き受けてくれている査読者たちへの感謝の気持ちを、忘れずに表すことも重要です。

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